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子供達だけの町

なんか日に日に長くなってますよね。

「子供達だけの町チャイ?」

「うん。子供しか受け入れずに15になったら町から強制的に追い出されるんだってさ」

「それはまた一風変わった町だな......。でもそれって俺達は入れないんじゃないか?」

「いやそれがどうやら町の内情を見せる為に年に数回視察団が町を訪れるのが決まりらしくてね。それで近年その視察団が無事に帰ってくることがないらしくて」

「まさか....?」

「元聖女の力とアルの名前を出して視察団に今回入れて貰っちゃった」



 てへと可愛く笑うカノだが元とはいえ勇者と聖女の名前を使ったということは元とはいえそれなりに責任が生じる。



「カノお前分かってるのか?」

「アルボクはきちんと分かってるつもりだよ」



 いつになく真剣なトーンで返事が返ってくる。どうやらただ町が見たいというわけではないようだ。



「それで助っ人は呼んだんだろうな? 今の俺達だけではとても道中のモンスター全てに加えて盗賊の警戒まではできないぞ」

「まあ今回はあの子がいるからね。余裕だよ!」

「お前あの子って....」



 俺はとてつもなく嫌な予感がする。俺とカノの共通の知り合いで尚且つ強くて人格者となると1人しか思い浮かばない。



「やぁアル君とカノちゃん。随分と久しぶりだね」

「やっぱりお前か....。剣神フロン」

「フロンちゃん今回はよろしくね。ボクもアルも今はそこら辺の冒険者に毛が生えたぐらいの強さしかないからさ!」

「うん。命の恩人である君達たってのお願いとあればこの剣神フロン喜んで受けさせて頂くよ」



 剣聖フロンは勇者と聖女がいなくなった今はこの世界で一番強い人間だろう。剣の腕もさることながら性格も顔も凄くいい。だけど俺は昔からすごくこいつが苦手だ。

 理由は単純で俺にとってはフロンは眩しすぎる。カノにはお似合いだと思うが。



「アル君が私のことを苦手としているのは知っているがそんなに苦い顔をしないでくれると嬉しい。私は何もアル君とカノちゃんの仲を邪魔しにきたわけじゃないんだ」

「それはわかっている。だから顔以外には出してなかっただろうが」

「もうアル折角フロンちゃんが私達の為に来てくれたんだからそういうのは良くないよ?」



 そんな会話をしながらも馬車は順調に子供達だけの町チャイへと進んでいた。



 ◇



「特に危険なものには遭遇しなかったね」

「それはお前が剣聖だからだ。俺達だけだったら数回死にかけてる」

「それはすまない。どうも長年こういう仕事をしているともっと過酷な目にも遭うのでな」

「それは俺達も同じだった。恐らく俺とカノがまだ現役だったならお前と同じことを思ってたはずだ」



 子供達だけの町チャイ近辺へ到着するまでに既にモンスターは2桁回盗賊も同じぐらいの回数遭遇した。全てフロンが1人で解決したわけだが。



「もうアルはもうちょっとフロンちゃんと仲良くできないの?」



 そんな事を道中カノから散々言われた気がする。もしかしたら俺も勇者という仕事をやめた事で歩み寄る時が来たのかもしれない。そう少しだけ思った。




 ◇



『ようこそ! 視察団の皆様!』



 10代前半ぐらいの少年少女達が俺達視察団を出迎えてくれる。



「驚いた。本当に子供達しかいないのだな....」

「うん! お姉さんはとても強そうだね!」



 無邪気な女の子がフロンの体をペタペタと触っている。今一瞬あの女の子から妙な魔力を感じた気がするが気のせいか?

 俺はもう一度目を凝らして女の子の方を見る。今は特に怪しい雰囲気は感じない。気のせいだったかと思い俺は女の子から目を逸らした。



「アル! 緊急事態だよ!」



 視察に来た翌朝、カノに叩き起こされる。



「なんだ....ってこの雰囲気は」

「ヴァンパイアが現れて視察団のおじさん達を殺して行っちゃったんだ」

「なんたってそんな化け物がこの町に....?」

「私も色々と魔力で探ってみたんだけどわかんないんだ。今はフロンちゃんが応戦してるけど1人じゃアルも....って私達もうほとんど戦えないんだったね......」

「そうだな。だけどこのまま二度寝するってのも性に合わない」

「アルもしかして」

「まあやるしかないだろ。それに....友達が困ってるんだしな」

「うん!」



 ◇



「フロン大丈夫か!?」



 俺とカノが到着した頃にはヴァンパイアもフロンもボロボロだった。



『お兄さん達も強かったんだ。じゃあ魔法をかけとけばよかったなぁ....』

「お前はまさかあの女の子か?」

『気づいてたの? 貴方いい目してるのね』

「アルどういうこと?」

「フロンがこの町に入った時あの女の子に触れられてその時に嫌な雰囲気を感じたんだよ。あの時は問題なしと判断したんだが....」

「だからフロンちゃんあんな苦戦してたんだ」

「恐らくはな。解呪を頼めるか?」

「わかった! やってみるよ」

『お話は終わった?』

「まあな。今度は俺が相手になってやるよ」



 俺はヴァンパイアに向かって突進する。

「とりあえずこれでも食らってろ!」

『剣神流 アビススラッシュ!」


『ぐぁぁぁ....って痛くない。もしかしてお兄さん弱いの?』



 どうやら皮膚の1枚も切れていないらしい。これはかなり厄介だ。元々ヴァンパイアには普通の斬撃攻撃が効きにくい。効果的なのは魔法か聖属性による斬撃だ。

 だが俺は魔法を打つ時はカノの補助がないと打てない。聖属性に至っては聖剣がないからなんともならない。



(それでもカノがフロンを治す時間を稼がないと!)


『忍流 まがいのたち!』



 忍流は少しだけ魔法が斬撃にのる特性が付いている。これでなんとか少しでもダメージが入ればいいのだが。

 まがいのたちによって発生した土煙が晴れたその先には無傷のヴァンパイアがいた。


『お兄さんやっぱり弱いよ。死んだ方がマシだよ?』

『ダークマジック シャドウイーター』



 着地をした瞬間を見逃さずに魔法が飛んでくる。あれはまずい。あれを食らうと俺は多分死ぬ。俺の中の直感がそう告げている。

 だがもう避けるのは絶望的な距離だ。


(カノ、フロンすまない......)


 俺は心の中で自分の不甲斐なさをカノとフロンに謝る。解呪をする時間すら稼げなくなった俺をどうか許してくれ....。

 目を瞑り死を受け入れる。

 1秒2秒3秒....何故か魔法が俺の体を貫かない。



「アル君諦めたらダメって君が教えてくれたのにダメじゃないか。君がそこで諦めたら」



 目を開いた俺の前にはシャドウイーターを斬り伏せたフロンがいた。死なずに済んだという喜びよりも昔ポロッと言ったことを未だに覚えてくれたいたことに俺は少し泣きそうになる。



「アルまた死のうとしてたでしょ? 本当に目を離すとダメなんだから....」

「そうそう。アル君は昔からそうなんですから」

「それはすまない......。フロン悪いが頼めるか?」

「言ったじゃないですか。お2人の頼みなら引き受けると!」



 そう言い残しフロンはヴァンパイアへと剣を降りにいく。斬撃が通らないとは言ったがあいつの持っている剣は特別だ。

 聖剣と対になる神剣アレス。聖剣と同じく聖属性が付与されている。



『お姉さんちょっと待って! 今までのことは謝るから!』

「アル君をボコボコにしておいて許すわけないでしょう?」



 一閃だった。俺があれだけ苦戦した相手を一太刀で斬り伏せた。これが普通の冒険者と剣神の差だ。



「アル君もカノちゃんも手伝ってくれてありがとう!」



 少し歩み寄ろう。そう決めたはずなのにやっぱり剣神フロンは俺にとって少し眩しすぎるかもしれない。



 ◇



「結局あのヴァンパイアが子供達の血を吸う為の町だったとは驚きでしたね」

「まあなぁ。元凶も倒したしこれでどうにかなってくれるといいんだが」

「またなんか後味悪いね。もしかしてボクとアルってついてないのかなぁ?」


 そんな事を話しながら俺達は報告を兼ねて一度近場の町へと向かった。

このお話が面白かった方、応援してくださる方はブックマーク又は広告下の☆☆☆☆☆を★★★★★に面白くなかった方は☆☆☆☆☆を★☆☆☆☆にしていただけると嬉しいです!


最後になりますがこの作品を読んでくださっている皆様に最大限の感謝を!


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