眠る事を禁じられた町
今日も複数話投稿したいです。
「今回はどこへ行く予定なの?」
「それがまだ決めかねてるんだよな....」
パラパラと宿の中で旅人用の地図を捲りながら考える。
「カノはどこか行ってみたいところとかないのか? ほら俺達は自由がなかったし1つや2つぐらいあるだろ」
「んーないこともないんだけど....まだいいかなぁ」
「まだってどういうことだ?」
「まあまあそれは置いておいてこことか面白そうじゃない?」
「眠ることを禁止した町スピか。お昼に行って帰る分には面白いかもな」
「じゃあ決まり! 早速向かおうよ」
何か誤魔化された気もするがカノにも隠し事の1つや2つはあるだろうしな....。にしても眠ることを禁止した町スピか。一昨日の死ぬことを禁止した町アルカみたいになってないといいんだが。
◇
「わぁ! アルみてみて!」
はしゃぐカノの指さした先にはゴーレムが立っていた。ゴーレムは魔術兵器の一種だ。
問題はゴーレムのあまりにもサイズが大きい。
「あんなでかいゴーレムは初めて見たが町の防衛には最適ということなのか....?」
『その通りです。よく我々のことを知っていますね』
「驚きました。ゴーレムって人の言葉を話せるんですね」
『はは、そう思われるのは仕方がありません。我々は少々特殊ですからね。何はともあれようこそ! 眠ることを禁止した町へ! 町では眠ること以外はなにをして頂いて構いません』
門番のゴーレムから少し離れカノがこんなことを言い出す。
「ねぇ何をしてもいいって私達はやらないけど盗みとかもできるってことだよね?」
「町のルールの上では可能だろうけどな。俺はやらない方がいいと思うぞ」
あまり理解できていなさそうなカノと俺は眠ることを禁止した町へと足を踏み入れた。
◇
「あれ?この雰囲気って」
町に近づいた時から俺が気づいた事をカノもようやく気づいたらしい。
「そうだ。あそこで働いてる人もあそこで酒を飲んでいる人も全員がゴーレムだ」
『よくお気づきになられましたな。旅の方よ』
突然後ろからお爺さんに声をかけられる。
「貴方は?」
『あぁすいません。私はここの町の町長をしている者です』
「町長さんですか。失礼も承知で申し上げますが珍しい町ですね」
『ええまぁ。10年前に貴方達と同じように旅に来た人が町の人間全てをゴーレムに変えてしまった。ただそれだけです』
「ただそれだけって....」
『哀れまれる気持ちはわかります。私達も始めはそうでした。何故私達だけがと何回も思ったものです。ですが過ごしていくうちに意外と悪くないかもしれないと思うようにもなりました』
「それはどうしてでしょうか? 普通は元の人間に戻りたいと俺は思ってしまいそうなものですけど」
『私達はゴーレムになったことで間接的に永久の命を手にしたからです。私達は何があっても死にません。この核が壊されない限りはですが』
そう言ってお爺さんが胸のあたりに埋め込まれた核を見せてくれた。ゴーレムは基本的にこの核を壊されると動きを止める。人間で言う死だ。
『今考えればあの旅人の優しさだったのかもとも思います。まあ兎にも角にも私達は眠りません。普通の人間には貴方方のように魔力を感じる能力もありません。だから眠らないというルールを作ることで私達はゴーレムとバレことなく平穏に過ごしているのです』
「盗みとかはおこらないんですか?」
『旅人が盗みを働く分には私達で対処できます。なんたってゴーレムですから。私達は物欲というものが基本的にありません。なので犯罪は起こり得ないのですよ』
◇
おじいさんの話を聞き眠ることを禁止した町スピをあとにした俺とカノは次の目的地を目指し歩いていた。
「にしても不思議な町だったね。町の住人全てがゴーレムなんて」
「そうだな....」
「どうしたの? なんか浮かない顔してるけど」
「あのお爺さんだけ核が違ったんだよな......」
「それは魔力量とかの話? だとしたら私も感じたけど」
「魔力量だけじゃなくて構造すべてが違っていたんだ。普通に住んでいる人とあの人で」
「つまりどういうこと?」
「恐らく忘れてしまっているんだろうがあのお爺さんこそが町全てをゴーレムに変えた犯人ってことだ」
「本人もゴーレムになったってこと? それって意味あるの?」
「言ってただろ? 永久の命を手にしたってそういうことだよ」
恐らくお爺さんは町の人達で人間にゴーレムの機関を移せるのか実験をしたのだろう。自分の生き残る道を探す為に。
永遠の命を手にしてもその目的自体を忘れてしまったというのは悲しいことだが。
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