死ぬことが禁止されている町
今日はこれで
「はい! これで晴れてお2人は旅人として認められました」
俺とカノは転職の為にギルドへ立ち寄っていた。
「えへへ。アルとお揃いだね!」
「お互い旅人。ちょっと前まで考えられなかったことだな」
「お互い勇者と聖女だったわけだしねぇ。ところで旅人になってから初めての行先は決まってるの?」
「下調べは済んでるよ」
「なんてところなの?」
「希望都市アルカ。死ぬことが禁じられていると言われている町だ」
「なんか変な町だね。名前は希望を表しているのに死ぬことが禁止だなんて」
そんな会話をしながら馬車に揺られていると希望都市アルカ近辺に到着した。
◇
『ようこそ!希望都市アルカへ!』
町の入り口にもかかわらず門番はいない。ただ立て看板があるだけだった。
「なんだか名前に反して不気味な雰囲気だね」
町に足を踏み入れた時から俺も感じていた。別に人の悪意があるとかそういうわけではないが都市全体に活気がなさすぎるような気がする。
「これだけ活気がない都市も珍しいよな」
「そうだね....。あの人に事情を聞いてみる?」
カノが指さした先には人....いやあれは。
「カノ残念だけどこの都市にいる人間は俺達だけかもしれない」
「え?でもあれって人じゃ....」
「あれはグールだ」
「ということはこの町は......」
「ああもう滅んでるだろうな。カノ浄化はできるか?」
「う、うん。やってみるよ」
『闇を祓い、魔を持つものを穿て! エクストシズム!』
『ぐぅぅぅ....!』
目の前のグールが僅かな悲鳴を上げながら消滅した。
「本当はグールの仲間が寄ってくる前に本当は離れるべきなんだろうけどな。カノどうする?」
「私は救えないものはある程度見捨てるべきだと思ってる。でも今回ボクの力があれば救えると思うんだ」
「でもお前はもう聖女じゃない。広範囲で浄化を撒き続けることができないだろ。俺も聖属性魔法は聖剣が起動しない今使えない。それにグールが何体いるかもわからない。リッチだっているかもしれない。これで救えるのか?」
「それは....でも」
「俺は今回この町は見捨てるべきだと思う」
「......わかった。今回はアルの言うことが正しいと思う。諦めるよ....」
こうして俺とカノの初旅は後味の悪いものになってしまった。
◇
「にしても運命の悪戯は残酷だよね。死ぬことを禁止した町がまさか死霊の町になっちゃうなんて」
「まあな....」
「どうしたの? 浮かない顔して。ボクはもうさっきのことは気にしてないよ」
「いやな。俺とカノが魔神討伐をやめたことでああいう被害が増えるのかと思うと少し思うところがあってな」
「それはボクも思う。だけど今のボク達じゃ助けられる限界があるからね。それは勇者と聖女をやっていても変わらないと思うんだ。だからボク達は勇者と聖女だった時と同じで救える命を確実に救おうよ」
「そうだな....! まさかカノに励まされる日が来るとは思わなかった」
「失礼な! 私だってこのくらいできるよ!」
そんな会話をしながら俺とカノは新しい目的地へと向かっていた。
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