勇者パーティーの崩壊
新作です。今日何回か投稿します。
「なぁ皆、今すぐ勇者パーティーから出て行ってくれないか?」
『え!?』
夕食の為に宿屋の食堂にパーティーメンバー全員が集まったのを確認した俺は笑顔でパーティーメンバーにそう伝える。
本当はこれから起こり得ることを考えると顔が引き攣りそうなのだが。
聖女、剣闘士グラディエーター、盗賊シーフ、魔法使いの全員が声も出さずに驚いている。
全員そんなことを言われるとは夢にも思っていなかったという顔だ。
暫くたっただろうか?
パーティーメンバーを代表するように剣闘士グラディエーターのロイが口を開く。
「アル正気か? 俺達は魔神を討伐する為に各国から集められた選りすぐりなんだぞ。何よりお前の独断で俺達を追い出すなんてそんなことは許されないはずだ!」
「独断、ね。俺はずっと黙認してあげてたと思うんだけどな」
「何をだ!」
俺への憤りが止まらないといった様子のロイが俺に食ってかかる。
「まさかロイも他の奴らも俺がパーティー共通資金と俺への報酬の使い込みに気付いてないと思ってたのか?」
「い、いやそれは」
急にしどろもどろしだすロイ。他のパーティーメンバーも何処か落ち着かない様子だ。
当たり前だろう。俺がパーティーの為にと持ち込んだ資金と俺に支払われるはずの報酬を全てこいつらがピンハネしてたのだから。
これは昨日俺がギルドへ直接確かめに赴いたから間違いない。
「で俺がお前達に聞きたいのは1つだけだ。この落とし前はどうつけてくれるんだ?」
「お、落とし前って言われてもなぁ? 皆もそう思うよな?」
「う、うん。仲間なんだしさそんなきつい言い方しなくてもいいかなってアナはおもうなぁ....なんて......」
「そもそも金を我々が盗んだという証拠はありませんよね?」
「私は何も....!」
三者三様に慌てたり弁明する様をみて俺は思わず乾いた笑いが出てくる。
俺は数年勇者としてしっかり仕事はしたつもりだ。
その報酬がパーティーメンバーの裏切りだというのだから仕方がないだろう。
「お前らが自分の罪を頑なに認めずそんな態度を取るんだったら俺もやる事をやらせてもらう。次にお前達と会う時はそこがお前達の墓場だと思え」
俺はそう捨て台詞を吐き宿屋を後した。
◇
「ついにバレちまったなー」
ロイが軽くまるで何もなかったかのように言っている。
「だから言ったのです。あれ以上はまずいって」
「そうは言ってもなぁ。馬鹿がどこまで騙されるかって試したくならないか?」
「それは貴方だけです」
「にしても見た? あの捨て台詞。結構面白いかったわ。次アナ達アイツに会ったら死ぬらしいよ?」
「ははは! あれは傑作だったな。カノちゃんはどうだった?」
人を嘲笑するような不快な喋り方。私はここでいうべきではないと思いながらも口を開く。
「......貴方達に人の心はないのですか?」
「おいおいカノちゃんいくら聖女様だからってそんな怖い顔で怒らないでくれよなー。あのバカを思い出しちまうだろ?」
「そうそう。しかもカノ貴女もあいつには私達の共犯者として捉えられてるから貴女も人の心がないってことになっちゃうわね?」
元から好きではなかったがこの人達とこれ以上行動を共にすることはできない。
そう思った私は勇者アルと同じく宿屋を飛び出した。
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