第4話 猫神様の旦那様はきつねちゃんに野球拳を挑み、猫少年は仔猫ちゃんのスカートめくる
猫神様に会いに行きます。
猫神様から宝玉「猫玉」を授かったひいらぎと私達は虚術を解かれログハウスのリビングにいる。
ガチャリ…
ドアが開いて一人の青年が入ってきた。
「あ、おさーん!」
「やぁひいらぎ。みなさんお疲れ様です。お茶をどうぞ、楽にして下さい。」
もう先ほどの神主の出で立ちは無く、ポロシャツにジーンズというラフな格好であった。
そのポロシャツは、白地で胸下当たりから薄い茶色から薄緑へのグラデーションしてる色合いに横線の入っていると言うもので、
「ほら、おさーんは格好がおっさんくさい。」
「こ、こらっひいらぎ!失礼よ」
「いや、いいんですよまいまいさん。はっはっは。」
「猫神様がおっさんはダメって言ったからおさーんにしたんだよ。」
「変わりましたけど…変わりないですよね、私はきにしないですけど。ははは。」
「猫神様も旦那さんがオッサン呼ばわりされるのが嫌な訳かい?猫山さん。まさかあんたが猫神様の旦那だったとは。」
「いつかこういう日が来るとは思ってましたよ、あるてさん。」
「なにあるて、知り合いなの?」
「なに、同じ町内会の方だ。寄り合いで良く顔合わせるんだよ。この人お酒弱くてね。この前の寄り合いで飲まされて、酔わされて、皆に担がれて無理矢理私に野球拳で挑戦させられてな、結果負け続けてパンツ一丁にさせられたりもしたんだ。実は猫山と言うのも偽名だったのかい?」
「あるてさん、あの時は虚術で絶対勝つようにしてたじゃないですか。まぁ女性脱がす訳にはいかないし、貴女が勝つの分かっていたから挑戦もしたのですよ。」
「(そっそれに今はその話関係ない…と言うか言わなくていいと言うか…もう全てノーコメントでっ)」
猫神様の旦那さんが町内会って…一体なんの冗談なんだろう?まぁあるてもそうだが狐の神様と猫の神様の旦那がいる町内会とはなかなか豪華な事ではあるが、豪華なだけで実はご利益無いっぽい…。まぁ、狐の神様と猫の神様の旦那が野球拳ってどんな町内会だってはなしではあるが。
それにしてもこの青年…ぱっと見普通の人間に見えるけど何かが違う……。
「あの…お気を悪くされたらごめんなさい。失礼ですが、貴方は人間…では無いですよね?」
「ははは…ですね。私は、まいまいさん…貴女と同じ「元」人間です。」
やっぱり…、何か私と同じ臭いがしたと思ったんだ…。
「でも、私のはちょっと長生きする程度で他は普通の人間と同じですよ。それ以上の事は今は事情で言えないので申し訳無いです。」
「いえ、こちらこそ変な事聞いてしまい申し訳ありません。」
今は…と言う事は後なら言っても良い、とも聞こえるけど…まぁ今は詮索してもしょうが無いわね。
「猫山さん、普段は妖の気配消していたんだな、私が気付かない位に。もっとも悪意があれば消しても気付くがそれが無かったから無理に探って無かったのもあるが。」
「ですね、町内会に化物がいてはマズイですからね。そこは綺麗に人間に化けて町内会の飲み会で、お酒呑んでるあるてさんと同じですよ。不要な不安与えてもしょうがないですからね。」
「あはは、違いない。これは一本取られたな。」
その時、コンコンとドアを、ノックする音が聞こえる。
ガチャ…
ドアを開けて入って来たのは小とろである。
「なぁ…もう大事な話は終わったのか?」
なんかずっと待ってたみたいだ。
そのままひいらぎの所にとてとてと行くと、ひしとひいらぎにしがみついた。
「ひいらぎ、過去に行ったらいつ帰って来るんだ?」
尋ねる顔はとにかく不安で心配で堪らなそうである。
「特に決めてないけど抹茶の元気な顔見に行くだけだし、そんなに長くならないと思うよ?」
「ホントか?本当にだな?」
「もお〜、今生の別れじゃ無いんだし…小とろは大げさなんだから。」
それでも小とろの不安顔は直ることは無く、今にも泣きそうな顔でひいらぎにひっついている。
困っているひいらぎを見かねて猫山さんが助け船を出した。
「あるてさん、まいまいさん、出発は明日の早朝でも宜しいですか?」
私達は特に断る理由も無いので了承した。
「ならひいらぎ、今日はうちに泊まって行きなさい。ゆっくり話でもすれば小とろも落ち着くでしょう。」
「わーい、小とろ遊ぼー」
そう言うや否か、ひいらぎは泣きそうな小とろの手を引っ張ってとたとたと部屋を出て行った。
そして次の日の早朝、私達は過去世界に旅立つ事になる。
あるての神社に行く途中、公ニのテントに目をやると白のZZR1100が無い、どうやら居ないみたいだ。
まだ帰って来てないのね。どこをフラフラと走っている事やら…。
「出発前にチョット顔見たかったナ…とか思っているのだな?」
「あるて、人の思考を勝手に捏造しないで!」
「ほぉぉ〜、違ったのか…それは失敬。くっくっくっ…」
ううう…違わないから見透かされた感が嫌だったのよっ!
「ひいらぎはまだ来てないみたいね。昨日の様子だとまだ小とろ君に引っ付かれているのかな?」
「ああ、多分そうだろうな。だからこの時間を指定したんだろう…。だが、ひいらぎも朝弱いからなぁ〜。」
暫くして猫山さんと共に現れるひいらぎ。
あるての言う通り、ひいらぎはもの凄く眠そうである。
「皆さんおはようございます、すみませんこんな時間を指定してしまって…多分、小とろがひいらぎから離れないから寝てる時間にコッソリと思ったのですが…」
「ひいらぎが予想以上に朝弱くて、寝起きが悪くて難儀した…と言う感じだな?」
「ははは…全くもってその通りです。ある程度は予想してたのですが、それ以上でした。」
猫山さんは苦笑している。ひいらぎの寝起きが予想以上に悪かったらしく、相当引っかかれた跡がそこら中に見えた。
その中で小とろを起こさないように静かにしなければいけないのでかなり大変であった事が容易に想像出来た。
ところがそのひいらぎは、自分は無関係とばかりに涼しげに話し始めたのであった。
「もぉ、小とろったら大変だったんだよ?ずっと私つかんで離れなくて…お風呂はともかくトイレまで付いてこようとするんだもん。」
「お風呂はいいの?」
「うん。お風呂はいつも一緒に入ってるし。」
「小とろ君とお風呂入るのは良くてスカート捲られるのはダメなんだ。」
「ああ、あれはね…」
ひいらぎの言うには、小とろはどこかで「スカートめくり」と言う知識を仕入れたらしく、それをしてみたいだけであってぱんつに興味があるわけでは無いらしい。
それが分かっているからじゃれ合いの一環で捲られる為に、ワザと捲りやすいようにミニスカートで小とろとの所に遊びに行っていたらしい。
「まぁ…小とろ君ならそんなとこだろうね。」
何となく私は妙に納得した。
昨日はあれから思い切り捲らせたのであろう、ホットパンツが赤のミニスカートに変わっていた。
「ところで…少し話があるのだが…」
あるてはそう言って猫山さんに近付き、何か小声で話しているが、こちらには聞き取れない。
「昨日の儀式と言う名の茶番…猫神様も随分とお遊びが好きみたいだな。まぁ、ひいらぎの事は任せてくれて構わないさ。私の大切な仲間であり家族だからな。」
「そうですか、全てを理解して頂いた様ですね。昨日の事はそれが目的でしたので…あるてさんなら必ずやそこに辿り着けるだろうと思っていました。その上でもう一度お願いします。ひいらぎの事を宜しく頼みます。」
「わかった。ひいらぎに必ず小とろを会わせる事を約束する。」
あるては両手を前に出し、その十指に妖力を込めると十の狐火が指先にゆらゆらと揺れだした。
その狐火は徐々に眩しくなって行き、一瞬激しく光ると狐火は空間に裂け目を作り出した。
「抹茶のいる過去世界の閉じかかった歪みを取り敢えず強引にこじ開けた。が、いつまでも開いてくれてる訳では無いから急いで行ってくるとしよう。」
私達はその歪を通り過去世界へと旅立った。