第3話 いたずら仔猫のいたずらに夢魔ちゃんはたまらず「ぅひゃぁぁぁン」
私達3人は猫神様のログハウスの前に来た。
「あるて、もの凄い力を持った猫神様がこの向こうにいるのよね?それが普通のログハウスで生活…?」
「うん…そうだな。この扉の向こうが全く想像出来ない…
何となく躊躇する私とあるて、そんな心配をよそにひいらぎは当たり前の様に呼び鈴を押す。
「呼び鈴って…凄い猫の神様が「いらっしゃ〜い、お茶でも召し上がっていってね~、ケーキもあるわよぉ~」とか出迎えてくれるのかしら…」
暫くしてとたとたと足音が聞こえる。
ガチャリとドアが開くとそこには猫耳と尻尾の生えた、言わばちょっと小さなひいらぎみたいな少年が出てきた。頭には猫耳の上から猫耳のフードを被っている。
小さなひいらぎはひいらぎにいきなり飛び付こうとしたが、ひいらぎはそれをさっと躱す。
小さなひいらぎは勢い余って地面に滑り込んでしまった。
「こら!小とろーっ!また私の胸触ろうとしてっ!」
「揉んで無い胸大きくしてやろうとしただけだろう?それにひいらぎ、いつもスカートなのに今日はズボンじゃないかっ」
「あんたがスカート捲るからでしょう!?本当にマセガキなんだから、お姉ちゃんのぱんつに興味持つなんて100年早いっ!」
「うるさいなぁ〜お姉ちゃんって100歳も歳上だろ?このロリババア!ぱんつ位見せても減るものじゃ無いしいいじゃないか!」
「小とろぉ~…そんなこと言ってると、なにかをピーンってするよぉぉぉぉぉっ!」
「ひっ!」
指で何かを弾くしぐさをすると、小とろと呼ばれた小さいひいらぎは股間押さえ隠して走り去って行った。
その途中一瞬止まり、
「かあちゃ…猫神様が、待ってるから早く来いよーーーって!」
と振り向きざまに叫びながら。
「・・・ひいらぎ、今のは友達か?」
「うん、でも友達と言うか…まぁあの子まだ50歳で100歳年下だし、怒られるのがわかってて悪戯してくる弟みたいな感じかな?猫神様の子供で小とろって言うんだけどほんとマセガキで困っちゃう。」
「・・・ピーンは良くするのか?」
「うん。小とろの小さいよ。」
「・・・そうか。」
「小とろ君、なんか好きな女の子にちょっかいかけている小学生みたいな感じね。ひいらぎも何だかんだいっても嫌がってはいないみたいだからいつものじゃれ合いぽいけど。」
今日はたまたまホットパンツだけど、いつもは捲られるのがわかっててスカートで来てるんだね。
ひいらぎが猫神様の所に良く来て居るのは小とろ君のとこに遊びに来てるのは間違いないみたい。やはり同族の友達が欲しかったのかな?
でも、私の夢魔の能力で好感度測ってみたら、小とろ君の方は気になる近所のお姉ちゃん的な感情でちょっとラブ臭するんだけど、ひいらぎは本当に友達と言うか弟程度にしか思ってないみたい。小とろ君…可愛そうに。
私達はログハウスの中に入る。廊下を通り出た場所はログハウスの外観からは大きさの合っていない、かなりの広さの畳ばりの向こうの見えない部屋…と言うかむしろ空間があった。
「あるて…これって」
「うん、虚術だな。虚術で空間の中に別の空間を作っている。しかもこの私がいつかけられたのかも気付かないほどの虚術…もの凄い極限まで練り込まれた虚術だ。さすがは猫神様と言ったところか」
そこに狩衣に身をつつんだ少年が現れた。先ほどの小とろである。
「今から猫神様が現れるので少しお待ち下さい。」
私達はいつの間にか現れた座布団に正座で座ると、そこに小とろはお茶を出しそして消えていった。
「何よ、小とろのクセにすましちゃって~っ!」
ひいらぎはお茶と一緒に出された羊羹をひょいパクひょいパクと口の中にほおり込み、お茶で流し込んだ。
日本には「せいざ」と言う文化があるが、実は私はソレが苦手である。
足首、ふくらはぎ、膝、腿、色々な部位に負担をかけて圧迫するから足が痺れるのだ。そして、今まさにその状態である。
「ンのほぉぉぉぉぉぉっ!」
突然足に刺激が走る。
私はその衝撃に耐えきれず、前つんのめりになりお尻をあげて顔を畳に擦り付ける姿勢になる。
足が痺れて動けない状態で、目だけでそれを追って見てみると、ひいらぎがじと目でニヤニヤしながら私の足をつついていたのだ。
「ほら、まいまいが苦しそうだったから、楽にしてあげようと思って?ぅぷぷぷ」
足がじんじんとして動きたくても動けない…そんな状態の中、目だけでひいらぎを威嚇する。
「ひいらぎ、ふざけてると怒るわよ…今なら許してあげるからもうやめなさい」
「まいまい~、そんな体勢で凄んでも怖くないよン♪」
「ぅひゃぁぁぁン…や゛、や゛め゛で…」
ひいらぎはうぷぷぷと笑いながらまいまいの足を更につんつんとつついている。
「ひぃいぃらぁぎぃぃぃぃぃぃ……いい加減にしないと本当に許さないわよおぉぉぉぉぉ……夢魔の能力で小とろ君の夢の中にあんたを引きずり込んで、淫夢で小とろ君の目の前でもの凄い恥ずかしいことさせるわよぉぉぉぉぉぉ…覚悟する事ねぇぇぇぇぇ…」
「ぎゃぴぃぃぃっごっ、ごめんなさいっ!もうしませんっ!」
黒いオーラを出しながら鋭い眼光を向けられたひいらぎは一瞬で血の気が引き、指を引っ込めてずざざざざ〜っと高速で後ずさっていった。
「こっ…怖いにゃあ…まいまいったらちょっとした軽い冗談も通じないんだから…」
ちょっとじゃないし、軽くもないからねっ。
全くひいらぎは怒られる事がわかっててイタズラするの辞めれないのかしら…。
100歳年上でも小とろ君と中身変わらないじゃ無い…。ほんと、子供なんだから…。
そんなちょっかいを受けていると、30代位の眼鏡の神主の青年が現れた。
「おさーん!」
「やぁ、ひいらぎ。それにあるてさん、まいまいさん初めまして。猫神様はもうすぐ現れますのでもう少しばかりお待ちください。」
おさーんと呼ばれた青年は猫神様の旦那さんらしいがどこからどう見ても普通のおじさんだ。
そのおじさんが何か唱えると力場が発生し辺りが真っ白く光る。そしていつのにか目の前に乳白色に輝く巨大な二尾の猫が現れていた。
こ、これが猫神様!?
このとてつもなく広い空間の視界を覆う巨体からは妖力が溢れんばかり、まるで決壊寸前のダムの様な力を持った猫又である。
「私が猫神である。ひいらぎ、あるて、まいまい、そなたら三人がこの度過去世界に行く事になった事は昔々より決まっていた事である。この過去行きの旅は三人に取ってそれぞれ大きな運命の転機となる事となるであろう。」
「ひいらぎ、前へ。これを授ける。私の力だ。必ずやお前を助ける事になるだろう。この宝玉「猫玉」受け取るがよい。」
呼ばれたひいらぎは猫神様の前に立つと、ひいらぎの前に胡桃色に輝く玉がふわふわと浮き現れ、ひいらぎがその玉を手にすると玉は浮くのを辞めてすとんと手の平に納まった。
「あるて、まいまい、ひいらぎの事を宜しく頼む。」
その言葉を言い終わるや否や、猫神様はふっと姿を消し、辺りの風景もそれまでの広い空間では無く、ログハウスのリビングで私達はソファーに座っていた。
「流石に夢だったのか…?とは言うまい。物凄い虚術だ。あの猫神様も本体に妖力を纏っていた物だったが、その妖力が極限まで練り込まれて質量を持ち、凝縮されて実体化し、本体と同化していて元の本体を特定出来なかった…。コッソリ正体覗いてやろうと思っていたのに…。」
あるて…、そんな事を企んでいたのね…。私には全然わからなかったわよ。
でもひいらぎが持っている猫神様の猫玉を見ればあれが夢でなくて虚術だった事がわかる。
「ひいらぎ、ちょっとその猫玉を見せてくれない?」
ひいらぎは私に猫玉を渡そうと手を伸ばす。
私がそれを受け取ろうとした時…。
バチバチバチバチっ!
「キャッ!痛いっ!」
指先に強烈な刺激が走った。
まるで猫玉が拒絶している様だった。
「どうやらその猫玉は結界と同じでひいらぎ以外受け付けないみたいだな。どれ、その猫玉を私の前に置いてくれないか?」
ひいらぎはあるての前に猫玉をおくと、あるてはまじまじとその玉を覗き込んだ。
「うーむ…あの強力な結界と同じだな。妖力魔力法力呪力、光も闇もありとあらゆる力の凝縮された玉だ。しかもその力は私なんかよりも遥かに上…。」
「ねぇあるて様、私達、過去で何があるのかなぁ?」
「さあな?先見の眼を持つ猫神様があの場でそれを言わなかったのはまだ言うべきでは無いとの判断なのだろう。更にはその強力な猫玉を授けたからには絶対に何か物凄い危険があるはずだ。生き残れると良いな。ははははっ。」
「ははははっ…て、他人事みたいにっ!あるて様もまいまいも、私を助ける義務があるのですからねーっ猫神様も「ひいらぎを頼む」って言ってたでしょう?」
「うん、アンタが危険な時には遠くから応援してるわよ、安心してね♪」
「そうだな、いざと言う時にはひいらぎ猫玉がある。死なない様に頑張るんだ。ははははっ」
「二人とも酷いにゃあ〜。」