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第22話 未来への旅立ち。仔猫ちゃんは過去世界に残るみたいです。

遂に来たる未来へと帰る朝、今私達は神社にいる。


神社には村人総出で見送りに来ていた。


過去に来る時には3人だったが、帰りは私とあるての2人だけ…

そう、ひいらぎはこの世界に残るのだ。


「ひいらぎ、元気でな。」


「うん、あるて様も…」


ひいらぎは笑っているがもう涙ぼろぼろである。あるても目頭が熱くなっている様だ。


「まいまい悪いか、ひいらぎは私に取って数百年と共に暮らした大切な家族だ。こんな時位涙も出るさ。」


いつものあるてなら絶対に認めず口答えしてくるのだが、いやに素直である。

でもそれはあるてにとってひいらぎの存在が、それだけ心に大きな存在だったという事だ。

そう、それは私にとっても同じ。私だって…


私はひいらぎを抱擁する。


「安二君と幸せにね。」


「うんありがとう。まいまいも未来に帰っても元気で。」


あるては安二君の手を握ると「ひいらぎをよろしく頼む、必ず幸せにしてやって欲しい」と頼んだ。


安二はそれに対して「おいらが絶対に幸せにします!」と即答で力強く答えると、あるてはそれに笑って答えた。


「長治さん、二人を見守ってやって欲しい。ひいらぎは私に取って妹みたいな、娘みたいな存在で、大丈夫と思ってはいても心配でならなくてな、これが娘が巣立つ親の気持ちなのだろうか…」


「お狐様、ひいらぎちゃんは、これからはオラの娘になるだけぇ、安心しとってくだせぇ。」


あるては改めて深々と頭を下げると長治さんも深く頭を下げた。



「抹茶、レナを泣かせるなよ、二人も早く一緒になって子孫を作れ。未来の芹穂が生まれなくなる。ひいらぎと安二に遅れを取るなよ。ひいらぎは、相変わらずあんな感じで迷惑かけるかも知れないが…抹茶に一番懐いてるからな、力になってやってくれ。」


「分かりましたあるて様。未来の芹穂にもよろしく言っておいて下さい。ひいらぎとは私も何百年も一緒に居たから大丈夫ですよ。ぜひ任せて下さい。」


レナは少し恥ずかしがっているが、そんなレナの肩を抱いて寄せて、力強く答える抹茶はどこか違った。

私の淫気を含ませたハムレットが、抹茶さんに戻った時のレナさんとの夜によって、抹茶さんのオスの部分を成長させたのだろうか?


「あの、まいまいさん、未来に帰ったら必ず来世のハムレットさんと会って、そして必ず幸せになって下さい。私とjebfjsbdだけが幸せになって、まいまいさんとハムレットさんが結ばれないのは絶対にあってはならないんです。約束して下さい!」


レナさんはハムレットに抹茶さんを助けて貰い再び恋人と再会できたが、そのせいで私とハムレットが引き裂かれてしまった事に深く負い目を感じてしまっているみたい。


でもハムレットは自分の事よりも他の幸せを考える人だから…同じ場面が100回あっても同じ行動をするだろう。

だからレナさんのせいではない。


本当に優しい娘ね…


「約束する。必ずハムレットと再会して今度は絶対逃さないわ。」


あるてが過去行きに目的が合ったみたいに、これは私の未来へ帰る目的だ。




「nyaよ、いずれは国に帰ると思うがそれまででもいい、ひいらぎと仲良くしてやってくれないか?私達が居なくなってしまえば同性の、同年代の妖怪の仲間はnyaしかいないのだ。」


「ふん、ひいらぎには借りもあるし、父さんはひいらぎに同じ事頼んでいたからな、まぁ暫くは付き合ってやるさ。」


nyaは言葉こそ悪いが迷惑そうとか嫌そうでは無いし、呼び方も猫からひいらぎへ変わっている辺りそれなりに認めてくれているのであろう。


「はっはっはっ、迷惑?嫌そう?とんでもない。nya様も幼少の頃は人間の迫害を受けてましたので友達もなかなか出来ずに()られた方、言葉には出さずとも同年代の友達が出来た事でとても嬉しそうでしたよ。」


と、言い終わると同時にnyaのキックが炸裂する。


……って誰!?


20代後半か30代前半かという位の背の高い青年が立っている。

しかも少しカッコいい。


「ああ、こいつはDELIだよ。昨日あれからアタシの眷属になったんだ。」


「ええっ!」


皆驚愕の声を上げる。


これがDELI!?昨日の鶏がら初老男と全然違う!

眷属になると若返る物なのか?


「はっはっはっ、人間から眷属になって不老を手に入れると、人間としての一番力みなぎる時期にその姿を留める事が多いそうですよ。」


DELIによるとそういう事らしいが、それにしても違いすぎる。

以前は眷属の儀式をしても体質からか眷属にはなれなかったみたいだが、さすがドラキュラの魔力と言った所か今回は見事成功、同じ時間ときを過ごせる様になった二人は結婚するだろう。

ひいらぎに続いて明るいニュースである。


「ところでnyaちゃん、眷属の儀式って何をするの?」


とnyaに質問するひいらぎ。

そんなのアンタの「あのヤツ」とやらと似た効果なんだから、似た様な事するのよ。だから察してあげようよ。

いや、察したからわざわざ聞いたのね…。




振られたnyaは顔を赤くしてびっくりするが、恥ずかしそうにコッソリと耳打ちする。


「単純にDELIの血を物凄く吸うんだけど…、ただその時に呪いを注入しつつその上で吸血化しない様に微妙なバランスを取って不死の呪いを与えるんだ。でも強すぎる呪いは人間には耐えられないから一晩かけて徐々に身体を慣らしてゆくんだよ。ただ…。」


そこまで言うとnyaは口篭る。


「ただなによ?」


「ただ、人間は血を吸われている間は物凄く気持ち良いから性的に耐えられなくなり本能で求めて来る様になるんだ。ほかっておくとそのまま燃え尽きてしまうから…、だから…燃え尽きない様にしてやるんだ。」


「するの?」


「……………うん。」


「で、まぁその本能で行動している時に呪力で魂を縛り、眷属として永遠の服従を強引に強いて逆らえなくするんだ。まぁ、眷属は吸血鬼にとっては永遠に血を吸う為の餌と言う意味合いもあるからな。」


「なんか怖そうな儀式ね。」


「そうでもないよ、二人の心が決まっている場合は…ただの激しい夜ってだけだからね…」


「ふぅん…?儀式の時、nyaちゃんからも誘ったりとかしたの?」


「ま、まぁ眷属は二人の夢だったし…記念の夜だし…。まぁDELIの趣味に合わせてちょっとだけ…?バスタオル1枚でうさ耳付けてみたりとか、まぁあれだ、ちょっとだけ…。」



何を話してるか聞こえないけど、耳打ちされたひいらぎも次第に顔を赤くして行く。

まぁ、そう言う事なんでしょうね。





「そうだひいらぎ、昨日nyaから貰った玉を出すんだ。」


そんな話をしていたところに突然のあるてからの話しかけにびくぅっ!となってひいらぎは驚く。

ひいらぎは慌てて玉を取り出すと、ある手に渡した。


あるてはひいらぎから玉を受け取ると力を込める。


「む…う…う…」


あるての掌と玉が激しく光りだす。

物凄い妖力を玉に吸わせているのだ。


暫くして光が収まると、今度はnyaに玉を渡す。


「すまんがnyaの魔力も玉に入れてやってくれないか?」


nyaは少し不思議な顔をしたが、別に断る理由も無かったので了承した。


nyaの掌で玉が黒紫のオーラの波の上で踊る。

魔力が強力すぎて玉が浮いてしまっているのだ。


「むぅぅ…さすがドラキュラの血を引く者だけあるな、物凄い魔力の放出量だ!」


「nya様はドラキュラ様の娘、魔力も同等の物を持っていますからな。はっはっはっ。」


やがて玉に吸わせ終わるとnyaはふぅ〜とため息をついた。


「これで良いのかよ?」


「ああ、ありがとう。」


あるては二人の力を吸わせた玉をひいらぎに返した。


「玉に私の虚術と法力、そしてnyaの呪力を吸わせておいた。後はひいらぎの妖力を媒体に増幅させて自分の力として使いこなせ。250年後に必ず必要となる。」


「250年後って…あっ、まさか!」


そこまで言うと、さすがのひいらぎも気付いた様である。


「そうだ。それが猫玉だ。そしてお前は今から猫神様になるんだ。」


ひいらぎは少し考えて見る。


「私が猫神様だとすると、未来のおさーんはこのおさーんで、すると小とろは私とおさーんの子供…。まさか…あるて様知ってた?」


「まぁそうだな。私は過去に来る前、猫山さん…未来の安二に、ひいらぎに必ず小とろを会わせると約束したんだ。それはひいらぎを未来に連れ帰る事では無く、必ず安二と巡り逢わせる事だ。これで約束は果たせたな。」


「あるて様、未来の小とろ、寂しがるかな?寂しく無いようにしてあげてね?」


「分かった、安心しろ。」


二つ返事で引き受けたあるて、これから小とろ君にミニスカートでまくられてパンツ見せるのだろう。


「まいまい、そんな事しないぞ。」


拒否りやがった。




ひいらぎが猫神様になると、強固な結界張ったり、抹茶さんのログハウスを虚術で精霊世界に持って行ったりと少なくとも2つの神業をしなければならない。


「ええっ!?私そんなん出来無いよ〜、でもやるしか無いんだよね、私の事だもん…。」


「そこでひいらぎから「やるしか無い」と言う言葉が出て来るならきっと大丈夫だ。頑張れよ。」


「うんっ!」




皆への挨拶もあらかた終わった。

皆名残惜しそうにしているが、出発の時が来たようだ。



「あるて、そろそろ帰るわよ、250年後あっちのひいらぎが首を長くして待ってるわ。」


「あ、あぁ…そうだな。ではそろそろ行くとするか、な…?」


何と無く歯切れが悪く聞こえる。


「あるて、どうしたの?なんかやり残した事があるの?なら早くやっちゃってよ。」


「あ、ああ。」


あるてはゆっくり動き始めた、そしてヘル松さんとまい子たんの前で止まる。


「まい子は魔素を一度は取り込んだ身体だ。ヘタな病気位、魔素が抗体となって吹き飛ばしてくれるだろう。前より元気になってる筈だ。これからは兄と共に仲良く暮らせ。」


「はい、すべてはお狐様のおかげです。ありがとうございます。」


そしてあるてはヘル松さんに顔を向ける。


「ヘル松…、ドラキュラとの戦闘時に制御が外れて暴走した人狼に襲われた時、危険を顧みずその身を挺して私を助けてくれたな。ありがとう、礼を言う。」


「お狐様、あの時は無我夢中で何が何やら…目の前で人が襲われていたので身体から勝手に動いてしまっただけです。」


「まい子、聞いたか?これこそ人間の鑑だ。良い兄を持ったな。」


「はい。」


「そ、それでな、感謝の意を表して何か贈ろうと思うのだが…うん、そ、そう言えば奉納相撲の優勝賞品が私の口付けだったが…まだ、与えていなかったな。」


突然の言葉にヘル松さんは狼狽した。


「いや、あれはお狐様に話を聞いてもらう為の算段であり…」


「四の五の抜かすな。」


んちゅ…


あるてはヘル松の唇を強引に奪った。

その瞬間、村人全員から歓声が上がる。


「あ…ああっ、お狐様の唇がヘル松なんかに…」


「う、うらやましい!」


「ヘル松泣かす!」


あるてはヘル松さんの背中に腕を回し、暫く密着したまま離れない。

長い長いキスだ。


やがて、あるてがヘル松さんからそっと離れると、ヘル松さんはヘタリと尻をついてしまい、まい子たんがそれを支える形になる。


「私の妖気をヘル松の体内に注入した。些細な病気や厄災なんぞ吹き飛ばしてくれるだろう。兄妹、無病息災で元気に暮らせ。じゃな」


と言うと、そそくさとその場を離れる。


「なぁに?あるて、ヘル松さんとキスしたかったの?」


「そういう訳では無いが…今回ヘル松は私達みたいな妖の者と比べると遥かに弱い人間の身体でありながら、自分が死ぬかも知れない状況にも関わらず私の為にそこに命をかけて飛び込んで助けてくれた。私は以前、抹茶とハムに血塗られた生き方から真っ当なな道へと導いて貰い、目から鱗が落ちる思いをしたんだ。今回の事は抹茶達の時と同じ位の感銘を受けたさ。だからそれに対して何の敬意を払わないと言うのは私の流儀に反すると言うか、何か礼の1つもすると言うのがこの世のことわりと言う物だろう?だから私は…」


長々と演説しているが、つまり一言にまとめると


「キュンと来ちゃったのね。」


「違うわっ!なんで私があんなゴリラフェイスに!」


顔を真っ赤にして否定するあるて、これはレアだ。


「あるて様かわいい。」


「ひいらき違う!私はヘル松なんて好きな訳無い!むしろ嫌いだ!……あ、いやヘル松、嫌いと言うのはその…言葉のあやでな、本心では無いからな。そう、お前は趣味だ。趣味を極めて特技になったんだ。つまりそう言う存在だ!分かるな!」


意味分からない…。

テンパり過ぎて自分でも何言ってるか分かって無いのね。


「あるて…もう、好きな物「ヘル松」、嫌いな物「ヘル松」、特技「ヘル松」で良いわよ。」


慌てふためくあるてに周りからどっと笑いが起きる。


「も、もう帰るからなっ!」


「そうね。では未来に…」




湿っぽい別れを笑いに変えたあるて。

皆の笑顔に見送られて私達は未来へと帰って行った。





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