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6・駅
「しゅっぱーつ、しんこう」
ゴトン、ゴトンゴトン
小雪の降る中、私の一声で最終列車が出発した。わずか二輌だけ連結された小さな車両が、闇の中に消えてゆく。ふと時計を見ると、白い文字盤に黒い針が八時半を示していた。
これで今日の仕事は終わりだ、駅舎の中に設けられた僅かな部屋……そこで明日を待つのだ。
ふもとの街では病が流行っているという、こんな時にはこの駅に訪れるお客様が増えるというものだ。
わたしはこの駅の駅長だ。この駅に訪れるお客を待つのだ。わたしは駅長だ、永遠に駅長なのだ。
了