4・僕
僕は何か不気味なものに姿を変えた駅員に向けて、撃った。発射された散弾は運転手と同じように駅員の上半身を粉砕した。
下半身だけになった不気味なものは、グチャッという音と共に駅舎の床に崩れ落ちた。足の生えたウジのような生き物だった。
だが、駅員が倒れ込んだその瞬間、駅舎全体が大きくゆがんだ。壁が、床が、ストーブが、まるで生き物のように捻じれて歪んで、脈打つ。
「そうだったのか……」
歪んだ床からはいくつもの骨が現れた。あの駅員や運転手が犠牲者を連れてきて、食べるのはこの駅舎なのだ。あの駅員や運転手は寄生虫のようにおこぼれをあずかっていたにすぎないのだろう。
だがこの状況は想定内だ。僕はコートの前をはだけ、体に縛り付けた中東の武器商人から買い込んだクレイモア地雷をむき出しにする。
左手をポケットに突っ込み、点火用のクリック式スイッチを取り出す。上から、下から、壁だった周りから液体が染み出してくる。床の倒れた駅員の体も、自分の靴も溶けていく。でも僕はそんなことは気にせず、覚悟していた通りにスイッチを握りしめた。
「香美……」
体中の地雷が破裂した。