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日本ワインに酔いしれて  作者: 三枝 優
第1章 健司と美月
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山梨県 北口本宮冨士浅間神社

「へぇ、立派な神社みたいですね。」

駐車場に車を止める。かなり広い駐車場。

ナビに従っていってみると、河口湖にほど近い場所。

北口本宮冨士浅間神社。

実家の宗教が神道であるため、神社に行く機会も多いのだが・・この神社は大きそうだ。

巨大な鳥居をくぐると、大きな杉に囲まれ、両脇を石灯籠が並ぶ参道が続く。

参道の真ん中は歩かないように注意しながら進む。

「すごい神社ですね、来たことあるんですか?」

「いえ・・・ネットで検索していたら出て来て気になっていたので・・」

ちょっと恥ずかしそうに話す瀬戸さん。

なぜ恥ずかしそうなのかはわからないけれど。


やがて、 隨身門があり、その先に古式ゆかしい神社(拝殿)が見えてくる。

手水で手を清めてから向かう。


「うわぁ。思っていたより立派です。」

瀬戸さんも感心しているようだ。


拝殿の前に立ち、二礼二拍手・・・

小さくつぶやく

「祓いたまえ清めたまえ守りたまえ幸えたまえ・・」

その後二礼。

瀬戸さんがちょっと不思議そうに見る。

「あぁ、うちは実家が神道だったので、お参りするときに唱えるのが癖になっていてね。ほら。」

拝殿の片隅にある札を指す。

そこには、”祓いたまえ清めたまえ守りたまえ幸えたまえを3回唱えること”と書いてある。

「そうなんですか。知りませんでした。」

そう言って、瀬戸さんももう一度手を合わせ、小さな声で唱えた。



「この後、お守りを買ってもいいですか?」

「もちろんですよ。」

授与所に向かう。

「どんなお守りが欲しいですか?」

「え・・・とどれにしようかな?・・・これにしようかな。」

悩んでいる瀬戸さん。


見ると・・

ん?

恋愛成就や縁結びのお守りが多い・・・?

「これにします。これとこれを下さい。」

お守りをいただいた瀬戸さん。

参道を車に戻りながら聞いてみる。

「瀬戸さん、この神社って・・」

「はい。恋愛成就のパワースポットで有名らしいですよ。」

「え・・・」

そこにカップルで来るって・・・急に恥ずかしくなってきた。

「はい、これは早乙女さんの分のお守りです。」

恥ずかしそうに差し出してくる。

「え・・・?」

白い”むすび守”。

「お揃いです。」

瀬戸さんは赤い”むすび守”を見せる。

うわぁ・・


かなり気恥ずかしい思いをしながら車に戻ってきた。




----


高速道路での帰り道。

「あの・・・この後、早乙女さんの家に行ってもいいですか?」

「ええっと・・」

何度も来ているので、来ることそのものはいいのだけれど。

「明日は平日で仕事ですよね?」

「あ・・そうでした」

てへっ・・・舌を出す瀬戸さん。

「今日は送っていきますよ。今日買ったワインもたくさんありますし、また今度の週末でもいですか?」

「はい!」

満面の笑顔を見せる瀬戸さん。

その笑顔を見て、また胸の奥がチリッ・・と感じた。


この胸の奥の感情。

きっとこれはまだトラウマが解消できていないということ。

助手席の瀬戸さんの笑顔を見て思う。

でも、もしかしたら・・・・と。

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