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日本ワインに酔いしれて  作者: 三枝 優
第1章 健司と美月
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鳥居平今村 キュヴェ・ユカ 2004ルージュ

「ぜひ、一緒に行きたいです。」

「相談したいので、おうちに行きますね。この間のワインを飲みながら相談しましょう。」


そうメールを受け取った。


あぁ、ワインがあったなぁ。

山梨県甲府市 シャトー勝沼 鳥居平今村 キュヴェ・ユカ 2004ルージュ。

ビンテージワインだ。


この間、飲もうとして飲めなかったワイン。

正直、飲みたい。

ただ・・・飲んでしまうと、なにか瀬戸さんに弱みを握られるような・・・。


やがて、玄関のチャイムが鳴る。

瀬戸さんがやっていた。


「誘ってくれてうれしいです!」

満面の笑顔で話してくる瀬戸さん。


「まぁ、せっかくだからね。」

「では、この間のワイン飲みながらどこに行くか相談しましょう!。」

嬉しそう。


なにか自分の胸の内にもやもやしたものを感じながら、話し合う。

今度行く予定なのは山梨県甲州市。

言わずと知れた、日本ワインの中心地。


グラスにワインを注ぎ、香りを嗅ぐ。


その瞬間、世界が変わった。



あぁ、これは素晴らしい。

濃厚な薔薇に包まれたような香り。


「すごく香りがいいですね・・・」


とてつもない香りの滝に包まれたような感覚。

瀬戸さんを見る。


きらきらとした瞳で見つめてくる。


そうか・・もやもやした感じの原因がなんとなくわかった。



こんなにもまっすぐな好意を向けられたことは今までなかった。

だから戸惑っていたのだ。


高校生ならばもっと遠慮がちなのだろう。

社会人になってからは、もっと駆け引きがある。


だけど瀬戸さんは。

まっすぐで、隠し立てなしで。


それなのに自分は過去にとらわれて。うじうじと逃げようとしている。

女々しいとしか言いようがない。

だから、逃げ隠れしたくなる。


でも、まっすぐなその気持ちに対しては。

ちゃんと答えないといけないのだろうな。


あぁ・・・でも。

今だけはこのワインの香りに浸らせてほしい。


きっとそのうち。

瀬戸さんの気持ちには、YesだろうとNoだろうと。

ちゃんと答えを出すから。

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