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日本ワインに酔いしれて  作者: 三枝 優
第1章 健司と美月
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武蔵ワイナリー KANPAI2019

タクシーに乗る前にどうしてももう一杯飲みたいというので、ハーフボトルのワインを開ける。

買ってきたばかりのワイン。

埼玉県小川町。武蔵ワイナリー KANPAI2019。

赤ワインの発泡ワイン。


グラスに注ぐ・・おや。

かなり、とろっとした粘度をもっている。

「いい香りですね・・」

嬉しそうに瀬戸さんが言う。

瓶の底のほうにはかなりおりがたまっているようだ。


すごく濃い色の赤。

小公子100%だからだろうか。

「すごく美味しいですよ、ブドウ感あふれているのにさわやかです。」

確かにおいしい。

このワイナリー独特のコクみたいなものもちゃんと感じられる。

「ハーフボトルだと、すぐになくなりますね・・ちょっと飲みたりないかも・・」

「いやいや、今日はちゃんと帰ってくださいね。」

「えー・・・」

明らかに不満げである。



「一つ聞いていいですか?」

うるんだ目で見上げて聞いてくる。

ああ、結構酔ってるな。

「どうして、ホテルで別な部屋で寝たんですか?期待していたのに・・・」

直球で来たな。

「だって、親御さんにも話して旅行に行ったのだからね。」

ホテルでもそう言ったはずなのだが・・

「私の・・初めて・・早乙女さんならいいのに・・」


あー完全に酔ってる。早くタクシー呼ばなきゃ。


「いや、そういうのはもっとちゃんと付き合って・・・」

「じゃあ、私のファーストキス。もらってください。」

じっ・・とうるんだ瞳で見つめてくる。

「それまで、帰りませんから。」


マジかよ。

これで、キスしたら既成事実になってしまう。

瀬戸さんと付き合うのが嫌というわけではないが・・



顔を近づけてくる瀬戸さん。そして、目を閉じて・・・


その時、瀬戸さんのスマホが陽気なメロディを奏でた。

着信らしい。


「いいところなのに・・・」

スマホを見る瀬戸さん。どうやら親御さんかららしい。

「出て大丈夫ですよ。」

嫌そうに電話に出る、瀬戸さん。



そのすきに、タクシー会社に電話する。

あぁ・・こんな時スマホのほうが便利なのだろうか。


「早乙女さん、お待たせしました。」

「大丈夫だった?親御さんからでしょう。」

「早く帰って来いって言われたけど大丈夫です!」

「そうでしたか。タクシーももうすぐ来るそうですよ。」


え・・・といった感じで固まる瀬戸さん。


タクシーはすぐ来たけど、瀬戸さんを説得して乗せるまで一苦労だった。

ふう・・・・


スマホに切り替えることを真剣に考えよう。


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