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日本ワインに酔いしれて  作者: 三枝 優
第1章 健司と美月
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たまには観光

「殺生石ですか・・・」

「そう。まぁ匂いがアレだから、長居はしないですけどね。」


谷間に漂う硫黄のにおい。

そこかしこに岩がごろごろしている。

「ここは、その昔に京の都で暴れまわった末に追われた九尾の狐が飛んできてなくなったところと言い伝えられているそうですよ。」

「へぇ・・・」

「まぁ実際は火山活動によるものなんですけどね。ほら、すぐそこに温泉がありますし。」

道を挟んだところに日帰り温泉がある。

「温泉ですか、いいですね。今日泊まるところに温泉はないんですか?」

「ありますよ、もちろん。」

「それはうれしいです。混浴があったり・・」

「しません。男女別です。」

「もちろんそうですよね」

にっこり笑っているが、何を言い出すのやら。


「では、もう行きましょうか。展望台で景色の良いところがあると思うので。」

「はい」


車に乗って山のほうに向かう。

「あ・・看板がありました。展望台って。」

「え?・・まだ早いと思うんだけど・・・」

「駐車場がありますよ。行ってみましょう。」





なぜ、止まってしまったのか・・・

もっと地図を確認するべきであった。

確かに景色はきれいだ。高原が見渡せるし、背後の山もきれいである。

「早乙女さん、見てください。”恋人の聖地”って書いてますよ。」

ああ・・そうですね・・・


「夜景が綺麗らしいですよ。後で来てみませんか?」

嬉しそうに言う。


いや、そこに・・・・カップルが夜景を見ると結ばれるようなことが書いてあるように見えるんですが・・・



大丈夫、間違いなく夜はお酒を飲んでいるから来ることはできないはず。

多分


きっと・・



――――――――

そのあと、お昼ご飯にすることにした。

高原の木々に囲まれた小さなパン屋さん。

そこに併設されているカフェスペースでサンドイッチとコーヒーをいただく。


ここのパンはおいしく、サンドイッチも絶品だ。

しかしながら、今はお客さんはあまりいない。

「それにしても、あまりパンを置いていないんですね。」

「いや、ここはね・・・」

すると、窓の外の駐車場に急に車が止まりだす。

どれもこれも、高級外車。

パン屋の店頭では、店員が声を上げる。

「パン焼き上がりました~!」

すると、あっという間に行列ができ、パンが飛ぶように売れていく。

びっくりした目でそれを見ている瀬戸さん。

「ここはあまりにも人気なので、あという間に売り切れるんですよ。とくに近隣の別荘の人たちに人気らしいですよ。」

「へぇ・・そうだったんですか。」


我々がご飯を食べ終わるころには、もうパンは売り切れたようだ。

ほんと、あっという間の出来事であった。


「さて、もうホテルに向かいましょうか。」

「え?もうチェックインできるんですか?」

「できますよ、早めにチェックインするほうが良いですし。行きましょうか。」


お昼過ぎ。ホテルに向かうことにする。

ここから、ホテルまではすぐ着くのだけれど。

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