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日本ワインに酔いしれて  作者: 三枝 優
第1章 健司と美月
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予約の変更

「これで、一緒に旅行に行ってもいいですよね?」

「本当に許可もらえたの?」

「本当です!電話してもいいですよ。」

それは流石に勘弁して・・・

「う・・・でも今から予約変更できないかもしれないし・・・」

「だから電話してください。聞いてみないとわからないじゃないですか。」

随分、ぐいぐいくるな。

以前と同じかそれ以上だ。

「じゃあ、電話するけど・・・もう一つ条件として・・」

腹いせに意地悪をするか。

「え〜それはずるいですよ。」

「ずるくない。条件として宿泊代は割り勘にさせてくれ。」

「なあんだ、もちろんですよ。」

「まぁ、予約できないかもしれないが一応聞くけど、食事で嫌いなものはないか?フランス料理なんだけど。」

「フランス料理・・・高級そうですね。嫌いなものはありませんよ。」

「少なめにしようか?」

「なんで、そんな意地悪を言うんですか。普通でいいです。」

はぁ・・気がのらないなぁ。

まぁ、多分無理だろうから電話するしかないか。

「念の為、電話をスピーカーモードにしてくれません?」

「スピーカーモード??」

「ちょっと貸してください。」

ガラケーを操作する瀬戸さん。

「これで耳につけなくても聞こえますよ」

はぁ・・・じゃあ、電話するか。



電話帳から宿泊先のホテルを選んで電話する。

しばらくして電話がつながった。

「ご無沙汰しております、早乙女様。支配人の中山でございます。」

「おはようございます、中山さん。ご無沙汰していて申し訳ありませんでした。」


そう、私はまだ名乗っていない。

名乗っていないのに支配人が普通に名前を答えてくれる。ここはそんなホテルなのだ。


「予約している部屋の件でご相談があるんですが。」

「はい、8月**日に予約いただいておりますね。どうされましたか?」

瀬戸さんが真剣な顔で顔を携帯に近づけてくる。

ちょっと近すぎです。

「参考に聞きたいんですけど、もう一名行きたいって人がいるのですが、追加でヒャを用意するなんて無理ですよね。」

まぁ絶対無理だ。このホテルは夏休みの時期は半年以上前に予約がうまる。

しかし、支配人の返事は予想の斜め上を行っていた。

「早乙女様のご予約ですが、1名とはいえお久しぶりでしたので『水庭』を確保しております。こちらでしたら御存知の通り複数のお部屋があるので全く問題ありません。」

ちょっとまて。一人旅の予約なのに、なんでそんな部屋を・・・

「それでは、追加でよろしいでしょうか?」

にんまりと笑いながら何度もうなずく瀬戸さん。

勝ち誇った笑顔である。

「はい・・追加でお願いします。」

「それではお食事はどうされますか?同じくメインダイニングでよろしいでしょうか?」

「はい、それでお願いします。」

瀬戸さんはガッツポーズをしている。

しかし、支配人の次の言葉に表情を変えることになる。



「お連れ様は生魚が苦手でらっしゃいましたでしょうか?あと、ハーフポーションにいたしましょうか?」


「え・・・いや、嫌いなものはないらしい。量も普通で良いそうです・・・」

「かしこまりました。では予約を変更いたしますね。お待ち申し上げております。お気をつけてご旅行ください。」


はぁ・・・ため息をつく。

予約できちゃったよ。



すると、さっきまで笑顔だった瀬戸さんが怖い顔をして聞いてきた。

「早乙女さん・・・・前にいつ誰と行ったんですか?たしか、彼女いないって言ってましたよね。」




このホテル、以前は頻繁に泊まりに行ったホテルです。

残念ながら今はありません。

ほんとに素晴らしいホテルだったんですが・・・


なので名前は出さない予定です。

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