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日本ワインに酔いしれて  作者: 三枝 優
第1章 健司と美月
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実家にて コエドビール

「体調はどうなの?仕事は相変わらず忙しいのかい?」

母親が聞いてくる。


土曜日に実家にやってきた。

特に大した用事があるわけじゃない。

両親の様子を見に来たのと、たまには顔を出さないと心配するから。

「大丈夫だよ、最近は前ほど忙しくないしね。」

「それならいいけど、むりしないでね。」

「母さんこそ、体調には気を付けてよ。もういい年なんだから。」

「はいはい、大丈夫ですよ。」


そうこうしていると、父親が帰ってきた。

「おう。もう来ていたのか。」

「お帰り、お土産持ってきたよ。」

持ってきたのはコエドビール。

ぜんぜん違う土地のものだが、美味しいからいいのだ。

「いつもすまんな。」


午後には、近くに住んでいる妹がやってきた。



とっくに結婚している。甥っ子も一緒に連れてきた。

一気ににぎやかになる。

旦那さんは仕事らしい。

「おにいちゃん。いい加減結婚しないの?」

もはや、親でも聞いてこないことを言ってくる。

「もう、俺はそんなこといいんだよ。相手もいないしね。」

「まぁ、《《あんなことがあった》》からしょうがないけどねえ・・」

ため息交じりにつぶやいている。

「もうそんなことすっかり忘れたよ。」

「はいはい」


にぎやかな実家。

夜ごはんには、鍋が出てきた。

「健司は飲まないのか?うまいぞ。」

お土産に持ってきたビールを飲んでいる父親に勧められる。

「車だから飲めないよ」

「泊っていけばいいじゃないか」

「明日用事があるから泊れないんだよ。」

すっかりおなか一杯になって、夜も更けてきたころ家路についた。


帰り道、携帯にメールが来た。

車を止めて、携帯を見る。

”昨日はごめんなさい。明日、大丈夫ですか?”

”大丈夫ですよ。待ち合わせはどこが良いかな?”

すぐに返事が来る。

”どこでもいいですよ。”

”じゃあ、12時に桜木町駅でどうかな?”

”わかりました。大丈夫です”

”では、よろしくね”

成り行きで、遊びに行くことになったけど。

彼女にとって、自分はいったい何なのだろう?


かなり年上の男。

兄か父親みたいな感じに思われているのだろうか。


返事がきた。

”明日、楽しみにしてますね”

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