表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日本ワインに酔いしれて  作者: 三枝 優
第2章
260/268

シャトー・ホンジョー 玉響(たまゆら)2007

 打ち合わせといっても、顔合わせ程度であった。

 詳細は別途資料を送るということで、その場はお開きとなった。



 その夜、19時。

 貴司は残業して、プロジェクトの概要をまとめた。

「メール送信・・と」



 この時間だから、返事は明日になるであろう。

 それにしても、まさか柏木さんと一緒に仕事をすることになるとは思わなかった。


 これも何かの縁かな・・・


 そう思い、PCを落とそうかとした時・・・


  ピコッ


 先ほど出したメールに返事が返って来た。


――――


「何よこれ」


 プロジェクトの概要と言うタイトルのその資料。

 まさかのパワポ。

 中身がほとんどない、スカスカの資料。

 これでは、全く内容がわからない。

 プロジェクト憲章くらい送ってくれればと思っていたのだったが・・・


「思った通り・・・また素人か」


 このプロジェクトも苦労しそうね・・・。


 ため息とともに、返事を返した。


――――

 さっきメールしてから10分とたっていない。

 せいぜい、”内容確認させていただきます”くらいのメールと思っていた。


 だが、メールを開いて唖然とした。


”不明な部分を噴出しでコメントいたしました。可能であれば早急に回答いただきたく思います”


 と、記載されたメール。


 添付ファイルを開くと・・・貴司が送ったファイルのすべての行に無数の吹き出しが追加されていた。


 まじ?


 この短時間で読んだうえで、コメントを記載したのか?

 尋常じゃないな・・・



 貴司はやむなく、一つ一つのコメントに吹き出しを追加して、回答を記載していった。

 

 すべての質問に回答を記載し、メールを送信できたのは20時を過ぎたところであった。


 貴司はため息をつき、椅子の背もたれにぐったりと体を預けた。

 思わぬ残業となってしまった。


 コーヒーでも飲もうかな・・・

 いや、まずは帰ろう。



 そう思った時。



 ピコッ


 

 また、メールが帰って来た。

 貴司は、そのメールをの中身を見て頭を抱えた。


――――

「返事遅いわね。もう帰ったのかしら」


 自宅で仕事をしていた洋子は、あきらめて冷蔵庫からワインを取り出してグラスに注いだ。


 このワインは・・・


 山梨県甲州市 シャトー・ホンジョー 玉響たまゆら 

 樽熟甲州 限定醸造 2007


「うまっ!」


 すっきりとしながら、コクと切れを感じさせるその味。

 日本橋の山梨県のアンテナショップで購入してきたワインである。


「これは当たりだわ」


 ワイングラスを片手に、PCの前に戻ってくる。


 夜の9時半を回っている。



「はぁ・・・このプロジェクトも苦労することになるわね・・」 


 暗い気分になりながら、洋子はワインを口に含むのであった。



――――


 貴司がメールの返事を出すことができたのは、夜の10時過ぎ。

 貴司は、すぐにPCを落とした。


 こんなに残業したのは久しぶりである。

 疲れ切った貴司は、足を引きずるように家路についた。


 だが、貴司は理解していなかった。

 まだまだ、これくらいの苦労は序の口だったのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ