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日本ワインに酔いしれて  作者: 三枝 優
第2章
253/268

安心院ワイン イモリ谷シャルドネ2019

「いらしゃ~い」


 土曜日の夕方、”いい天気”の扉が開いた。

 入って来たのは、常連の早乙女健司と三崎海斗であった。

 まぁ、最近は来店する頻度が減って、元常連と言ってもいいくらいなのであるが。


「カウンターでよろしいでしょうか~?」

「ああ、大丈夫だよ」


 案内された席の隣には、柏木洋子がパスタを食べている最中であった。


 健司は白ワインを、海斗はウーロン茶を注文した。


「こんにちわ、最近よく会うね。まさか毎日来てるわけじゃないんだろ?」

「う・・・毎日・・・じゃないわよ」


 実際は、”ほとんど”毎日来ている。


「確か、一人暮らしだったよね。自炊とかしないの?」

「・・・うちにはフライパンも鍋もないから・・・」

「え”?」


 おどろく健司と海斗。


「だってだって、もともとは3か月だけの異動ってことだったから。そしたら、延期になっちゃったのよ~」


 頬を膨らませる洋子。


「だいたい、忙しくて料理を作る気にもならないわよ」

「はあ、大変だねえ。IT関係だっけ?」

「うん、そんなところよ」


 ため息をつく。



「ところで、先週は伊豆にツーリングに行ったんだけどよかったわよ。中伊豆ワイナリーにも行ったわ」

「へえ、あそこは行ったことは無いんだよ。どうだった?」

「なんか、すごかった。ワインも美味しかったわよ」

「へえ、いいねえ」

 

 白ワインを飲みながら、健司は今度行って見ようと思った。


 注文したワインは


 大分県宇佐市安心院町 安心院あじむワイン シャルドネ イモリ谷 2019


 切れのある酸味が料理にもよく合う。



「そういえば、あなたはバイクの免許とか取らないの?」


 洋子が海斗に聞いてきた。


「あ・・バイクの免許じゃないですが、車の免許をとりに教習所に通い始めました」

「へえ、そうなんだ」


 健司も初耳であった。


「それで、免許が取れたら父親から原付をもらうことになってます」

「へえ、いいわね。スクーター?。最近は原付も結構高いからもらえるならいいわね」

「いえ、古いバイクなので、そんなに高くはないと思いますよ」

「なんていうバイクなの?」

「ホンダのモンキーっていう、ちっちゃなバイクです」


「「え!?」」


 その瞬間、健司も洋子もびっくりした顔で海斗の方を向いた。


「え?どうしたんですか?」


 二人の表情に、引き気味の海斗。


 健司は、スマホで検索し画面を海斗に見せた。

 バイクの中古のサイトである。


「え・・・こんなに高いんですか・・・?」


 そこに表示されていたの値段は、どれも数十万円の値がついている。

 かなり古い年式でも、高値がついている。


「50ccのモンキーは絶版なうえに人気があるバイクだからね」

「最近、特に人気は高いわよ~。値段がどんどん上がってるわ。ただで手に入るなんてラッキーだわ」

「せっかくのモンキーならメットやグローブをバイクに合わせてコーディネートしないと」

「その前に、ちゃんと整備してから乗らないと駄目よ」


 健司も洋子も、興奮気味に話してくる。


「はぁ・・・」


 全くの無自覚だった海斗としては、どれほどすごい事かわかっていなかった。

 

 


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