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日本ワインに酔いしれて  作者: 三枝 優
第2章
250/268

伊豆

 厚木-小田原道路を西に向かって走る。

 出口から一般道を少し走って、右折し箱根ターンパイクに入る。

 ふと見ると、柑橘系らしき黄色の実がなっている木が斜面に見える。

 みかんだろうか。


「あ・・・しまった」


 右折してすぐの料金所で、柏木洋子は焦った。

 ここはETCが使えないらしい。


 料金所で、タンクバッグを開けて財布を取り出し料金を払う。

 後ろの車から、早くしろとみられているようで、あたふたと焦ってしまう。


 料金所から出るとすぐに急な上り坂。


 後ろから追いついてきた車に道を譲ると、ハザードを出しながら追い抜いて行った。


 道は、ずっと上り坂である。

 それほどワインディングはきつくない。


 トコトコとゆっくり愛車を走らせる洋子。

 パワーのあるマシンなら飛ばすのだろうけど、そういうバイクでもない。

 焦る必要はないので、ゆっくりと昇って行った。



 終点を右に曲がる。

 少し下ると、また料金所。


「あちゃ・・・ここもかぁ」


 ここもETCは使えない。


 料金所を過ぎてバイクを走らせる。

 すっかり高原の風景である。

 風が冷たい。


 しばらく走って行くと、左に今回のツーリングルートのメインの道路。


 伊豆スカイラインの入り口が見えた。



 左折して、すぐに料金所。

 ここもETCは使えないようだ。


「どこまでいくんだい?」

「はい?」


 料金を払おうとしたら、料金所のおじさんに聞かれた。

 どうやら、何処まで行くかで金額が違うようだ。


 でも、申告制でいいんだろうか・・・・?


「冷川・・・だと思います」

「はい、じゃあこれがおつりね。出口でこの券を見せてね」

「ありがとうございます」


 どうやら、嘘を言っても出口でわかるらしい。

 ちょっと安心した。



 しばらく走らせると、右手に海が見えてきた。

 おそらくは駿河湾なのだろう。


 あいにくの曇り空だが、雲の隙間からの光によって荘厳な雰囲気にも見える。



 するとすぐに、左にも海が見えた。


 さすが、バイク屋で聞いただけあって走りやすく景色の良い道だ。

 ツーリングするのに有名なだけある。


「これで、スピードを出す車がいなければもっといいのだけれど」


 直線で道を譲ると、物凄いスピードで白いポルシェが追い抜いて行った。

 さっきから何台も車が追い抜いていく。


 ビュウゥゥン


 今度は、CBRと思われる大型バイクが追い抜いて行った。


「い・・・いいもん。のんびり行くんだから」


 洋子は仕事のストレスを休日に発散させるためにバイクに乗っているのである。

 こんなところで、余計なストレスをさらに増やしたくはない。


 ゆっくり走ると、心に言い聞かせて走るのであった。






 柏木洋子が伊豆に来たもう一つの理由。

 それは・・・


「これこれ。これが食べて見たかったのよ」


 TV番組で見て以来、一度食べて見たかった料理。


 わさびが名物の店の、わさび丼。



 それが、まさに洋子の目の前に運ばれてきたのだ。


 どんぶりの上に鰹節がかかっているだけ。

 その横には鮫皮と本わさび。


 すりおろしたばかりのわさびをおかかご飯の上と一緒に食べるだけのシンプルな料理?である。


「うん!おいしい!」


 満面の笑顔でどんぶりを掻きこむ洋子。


”豪快だなぁ”

 周りの客は、かわいらしい風貌の女の子と、その大胆な行動とのギャップに驚いてチラチラと見ている。

だが、洋子は全く気付いていなかった。


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