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日本ワインに酔いしれて  作者: 三枝 優
第2章
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再会

 金曜の夜。

 山口貴司は、合コンを終え自宅に帰る道を歩いていた。


 今日の合コンで、二人の女の子と連絡先を交換できた。

 2次会に誘われたが、断ってきたところである。


 なんとなく、そんな気分になれなかったのである。



 とぼとぼと歩いていると、飲み屋の明かりが目に入った。

 こじんまりした店。イタリアンのようである。


 なんとなく、飲み足りない気分。普段は独りで店に入ることないが、その日はなんとなく扉を開けてしまった。



「いらっしゃ~~い」


 間延びした女性の店員の声。

 店の中は、遅い時間のわりには客が多かった。


「おひとりさまですか~?」

「あ・・はい」

「じゃあ、こちらのカウンターでよろしいですか~?」

「じゃあ、とりあえずビールで」


 案内されたカウンターに腰かける。




 そして、一つ間を開けた席に座る女性を見た瞬間、心臓がドキリと音を立てた。




 席に座っている、ショートボブの小柄な女性。

 その女性を見るのは初めてでは無かった。

 父親の店に来ていた女性に間違いない。

 

 店員とにこやかに話をしている。その様子からすると、どうやら常連のようである。


 やがて、店員が他の席にオーダーを取りに行った。


 女性を見ていた貴司と、目が合う。

 貴司はぺこりと会釈した。

 女性は、キョトンとした表情。


「あの・・私は、山口貴司といいまして・・・山口モータースの家の者です」


 すると、その女性はパアッと笑顔になる。

 その笑顔に、再びドキリとする。


「そうだったんですか。いつもお世話になってます。私は柏木洋子って言います」

「こちらこそ、お世話になっています」


 貴司はドキドキしながら、話したが・・・

 次の瞬間、別の意味でドキリとした。


「貴司さんは、どんなパイクに乗ってるんですか?」


 ニコニコと質問された。


 背中をゾクリと寒気が伝う。

 一瞬で酔いがさめた。


「あ・・・私は、バイクに乗っていないので・・・」


 それどころか、貴司はバイクの免許すら持っていなかった。


 すると、柏木洋子は微妙な表情になる。

 若干、笑顔がひきつる。


「そ・・・そうなんですか」


 その後、会話は続かず微妙な空気になった。

 そりゃそうだ。

 相手はバイクが趣味の女性。

 それなのにバイク屋の倅がバイクに乗っていないときたもんだ。

 共通の話題が見つからない。


 その微妙な空気のまま、しばらくして柏木洋子は先に会計を済まして席を立った。


「それでは、勇二さんによろしくお伝えください」

「あ・・・はい」



 せっかく会えたのに、全くと言っていいほど話せなかった。

 

 貴司は、非情に悔しい気分であった。

 

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