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日本ワインに酔いしれて  作者: 三枝 優
1.5章 閑話 家飲み小話
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牧丘メルローペティアン 2020

「きゃあああ!!」


 その夜。瀬戸家では、次女のひなたの悲鳴が響き渡った。


「どうした!?」

「どうしたの?」


 両親が駆け付けると、胸を真っ赤に染めたひなたが涙目に浮かべて立ちすくしていた。






 その夜、夕食をひなたが作ることになったのだ。

 そろそろ、料理を覚えた方が良いという母親が主張したからである。


 姉が結婚してから、なぜか次女のひなたにも花嫁修業をさせないといけないと思ったらしい。

 まだ大学生ではあるのだが・・


 だが、姉よりも料理は得意のひなた。

 今日は、ビーフシチューを作ることにした。


 玉ねぎ、にんじん、ジャガイモの下ごしらえをする。

 それらをいため、鍋に入れる。

 その後、牛肉もフライパンで焼いて焼き目をつけ鍋に入れる。

 そこに、デミグラスソースを入れて・・・


「赤ワインもらっちゃえ」


 棚に入れている、ワイン。

 確か、義兄から父親がもらっていたワインを取り出した。

 かわいい猫のイラストがラベルに描かれている。


 そのワインは・・・


 山梨県山梨市 三養醸造株式会社

 牧丘メルローペティアン 2020


 鍋に入れようとして、そのボトルのスクリューキャップを・・・・ひねった。




「きゃあああ!!」




 ボトルから、赤い液体が泡と共に吹き出した。

 その液体は、ひなたの着ている服の胸元を真っ赤に染めてしまったのだ。


「どうした!?」

「どうしたの?」


 両親がキッチンに駆け込んでくる。

 そこには、ワインのいい香りが漂っていた。


 ひなたの持つボトルからは、1/3ほど中身が無くなっていた。





「う~~ん、これ落ちるのかな~」

 真っ赤に染まったTシャツから着替えた。

 ワインのシミは落ちにくいと聞く。

「何とかなるわよ、それよりご飯どうする?」

「今から作る~」


 父親はキッチンの床を雑巾で拭いていた。


「この残ったワインどうするかねえ」


 ひなたが開けたワインは、スパークリングワインだったのだ。

 冷やしていなかったため、吹き出したらしい。


 すると、母親のさくらがスマホを持ちながら話してきた。


「なんでも、そのまま鍋に入れていいそうよ。炭酸がお肉を柔らかくするかもって」

「へえ。そうなんだ」

「あとねえ・・」



 夕食が無事に完成した。


 ビーフシチューとサラダとパン。


 そして、グラスには先ほどのワイン。


「それにしても、ワインに氷かぁ。その発想は無かったなぁ」


 電話で、娘婿に聞いたら冷えていないスパークリングワインでも氷を入れればよいと教えてもらったのだ。


「このワイン美味しいわね。さわやかで香りがいいわ」


 氷を浮かべたスパークリングワイン。

 まさしく、夏にぴったりである。


 辛口のワイン。

 ビーフシチューにも合っている。


「それにしても、ひなたちゃんが作ったビーフシチュー美味しいわ」

「うん、肉が柔らかくておいしい」


 両親が、料理を褒めた。

 が・・・・本人は、それを聞いていなかった。



 こっくり・・・こっくり・・・


 たった一杯のワインを飲んだだけでうつらうつらと居眠りを始めたのである。

 あいかわらず、お酒が弱いひなたであった。

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