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日本ワインに酔いしれて  作者: 三枝 優
第1章 健司と美月
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閑話 ワインの味の表現

 美月がスマホで何かを見ている。と思ったら、健司に聞いてきた。


「健司さん、ワインの通販の商品説明を見ているんですが、ワインの表現っていろいろあるんですね」


 健司は、それを聞いてちょっと嫌そうな顔をした。

 健司にしては珍しい表情だ。


「実は・・ワインの味の表現をする言葉って、ある程度決まっているんだ」

「え?そうなんですか?


「基本は、色・香り・味の3つ。それぞれのに対して表現があるんだ。詳細は本とかサイトを調べると出てくるけどね」


 例

  色・外観

   透明・にごりあり・発泡

   濃度が濃い・トロっとしている・軽い・サラッとしている

   淡い・薄い・濃い

   (赤ワイン)黒・紫・赤・ルビー・ガーネット・オレンジ

   (白ワイン)無色・黄色・緑がかった・黄金色・琥珀色

  香り

   果実系:いちご・プラム・ブルーベリー・レモン・洋ナシ・リンゴなど

   植物系:森の下草・キノコ・ハーブ・紅茶・バニラ・ココナッツなど

   花:バラ・スミレ・はちみつ・キャンディーなど

   動物:じゃ香・バター・クリームなど

   ミネラル系:鉛筆・ミネラルなど

   土系:雨が降った後の土の香り・畑の香り・湿った土の香り

   その他:トースト・アーモンド・カラメル・コーヒー・タバコ

       ・燻製・樽の香りなど


  味

   口当たり:軽い・強い・なめらか

   コク:コクがある・ライトボディ・フルボディ・重い

   甘さ:甘い・辛口

   酸味:酸が強い・低い・鋭い

   果実味:強い・弱い

   余韻:長い・中・短い

   その他:タンニンが強い・渋い

       若い・熟成されている


  その他

   チャーミング・ずっしり・複雑


「いっぱいあるじゃないですか!」

「いや、ある程度分類できるんだよ」


「でも、健司さんはこういう表現ってほとんど使いませんね」

「実は・・これらの表現はあまり好きじゃないんだ」


「どうしてですか?」

「ワインが好きだって言う人は、結構こういう表現使ったり・・

 マニアックな知識をひけらかしたりする人が多くてね」


 実は、ワインマニアの人と喧嘩になりかけたことがあったのだ。


「ソムリエとかと話すと、ひとによっては長々とうんちくを聞かせられたりしてね」

「はぁ・・」

「でも、思うんだ。

 ”スミレの香り”って言われても、スミレの香りなんて嗅いだことないからわからない!って思うし、洋ナシの香りって言われてもブドウだろう!って思うしね」


 実際は、この香りを”スミレ”と表現しているのだろう、とはわかっている。

 でも、一般の人にそれは分からないだろうとも思っている。

 ワインの味を表現するにしても、小難しい表現だと思っているのだ。


「それはそうですね」

「鉛筆の芯の味って・・なんだ!って思うしね」

「なるほど・・・」

「あとは、産地の斜面がどうとか聞かされても・・・実際に行って見てみるのは良いんだけどね」

「はぁ・・確かにそういう話をしている人を見たことありますね」


「酒飲みはうんちくを語る人が多くて困るんだよ。特にワインマニアの人はね」


 ワインは飲んで、気に入るかどうかでいいと思う。


 飲み方も、炭酸で割ろうが氷を入れて水で割ろうが、ホットワインにするとか、好きに飲んでもいいと思う。

 気に入らなかったワインでも、炭酸で割るとおいしかったりするのだ。


 ワインマニアにしたら、もったいないとか言われるかもしれないが。

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