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日本ワインに酔いしれて  作者: 三枝 優
第1章 健司と美月
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ノーザンアルプスヴィンヤード waltz 2018

土曜日、瀬戸さんと待ち合わせをして映画を見に行った。

少女漫画が原作の実写映画。恋愛ものであった。結構面白いと思ったが、隣で瀬戸さんは非常に感動して涙を流していたいた。

「すごく良かったです。あの場面でヒロインが告白する場面、原作そのものでした。」

原作を読んでいたらしい。

レストランでランチを食べながら、感想の聞き役に徹する。

「さて、このあとは・・」

「夜ご飯は早乙女さんの家で食べましょう。その材料を買っていきましょうか。」

「もちろんいいですけど、もう家に来ますか?」

「はい!そうしませんか?」

「じゃあ、時間があるから夜ご飯は煮込み料理にしましょうか。」

ーーーー

「おじゃましまーす。」

食材を買い込んで帰宅する。

もちろん瀬戸さんも一緒に。

「じゃあ、まず料理の仕込みをしましょうか。」

シチュー用のもも肉(比較的大きなかたまり肉)に塩・胡椒し小麦粉をまぶす。それをフライパンで焼き色を付けて焼く。

一旦取り出した後、玉ねぎ1個半を薄切りにしフライパンで色がつくまで炒める。その後にんにくのみじん切りも加えて火を通す。

それと、先程の肉を一緒に鍋に入れて加熱。そこへ・・・ギネスビールを一缶入れる。

一煮立ちしたときにアクを取って、あとは蓋をして弱火で煮込む。

「どれくらい煮るんですか?」

「肉によっても違うんですけど、3時間くらいは煮込みたいですね。」

「じゃあ、それまではゆっくり待つしか無いですね。」

なぜか嬉しそうに言う。

「じゃあ、リビングで映画でも見ながら待ちましょうか。」

ソファに座って、DVDを再生する。古いフランスの恋愛映画。

食前酒?として青森シードルを飲む。

「これ、りんごのお酒ですか?美味しいです。」

映画を見ていると、瀬戸さんが方にもたれてきた。

見ると、恥ずかしそうに見上げてくる。

可愛いな・・

瀬戸さんの髪をなで、キスをする。

そういえば、ようやく2度めのキスだな・・

「外だと・・・こんな事できないので・・・」

なるほど、それで早く家に来たがったのか。

それから、キッチンタイマーに邪魔されるまでイチャイチャしたのだった。

ーーーー

料理の仕上げに、トマトペーストとバターとコンソメ。

足りなければ塩コショウを入れるのだが、今回は十分美味しくなった。

あとはサラダを用意して完成。

「それでは夕食にしましょうか。」

「はい、ワインも飲みますか?」

「そうですね、ビールも合うんですけど赤ワインも合うと思うので。」

ワインセラーからワインを選び出す。

ノーザンアルプスヴィンヤード Waltz 2018 。

ワイングラスに注ぐと濃厚な赤色。

「香りが・・なんというか重厚ですね。」

口に含むと、濃厚な果実味と・・

「ちょっとボルドーみたいに香りが層になって変わっていくね。」

「層になってですか?」

「口の中で鼻に抜ける香りが、時間とともに変わる感じです。」

「あ・・・確かに。」

これはいいワインだ・・

「このお料理、ちょっと苦味があるけどお肉が柔らかくて美味しいです。」

「このワインとの相性も良いですね。よかった。」


「そういえば、一つお願いがあるんです。」

瀬戸さんが真剣な顔で言う。

でも、酔っているのか肩にもたれたままではあるのだが。

「名前です。」

「名前?」

「付き合っているんですから、名前で呼びませんか?」

あぁ・・なるほど。

「いいですよ、では私のことも名前で読んでくださいね。」

「はい・・では試しに呼んでもらえないですか?」

「え・・と。美月・・・でいいですか?」

すると、ふにゃ・・・とした笑顔になった。どうやら嬉しかったらしい。

「はい、健司さん。これからもよろしくおねがいします。」



ーーーー

なお、やはりタクシーで帰ってもらうために説得するのには苦労した。

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