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第一話 ①

投稿するの普通に忘れてました。


基本、私の書く小説はここの機能だと長過ぎて読みにくいと思うので、分割します。


では、どうぞ

 最悪だ。

 俺は虚ろな目で眼前にそびえ立つ段ボールの山々と、向こうでその片付けもせんとひたすら持参したお菓子をばくばく食らっている、俺の娘だという人物をゆっくりとした速度で交互に見つめた。そして溜息を吐いた。認めたくない。ただそれだけだった。

 よりにもよって、あんなのが俺の娘かよ。見るからに変人じゃねぇか。ブサイク、デブ、もしくはその両方を兼ね備えていたら問答無用で追い返そうと思っていたら、残念なことにどれにも当てはまっていなかった。当てはまってはいなかったが、さらに強烈なのが来ちまった。ていうか、俺面食いなんだからブサイクが生まれるわけがないじゃないか。その時点でなんで気付かなかったんだ。だからって容姿が良ければいいって話でもないが、どうであれ娘である限り来たら追い返す気満々だったのに、先程の初めましてのご対面が衝撃的過ぎてうっかりタイミングを逃してしまった。いや、言えばいいんだけどね。別に今すぐ「出ていけ!」と強く言っても、「出ていっていただけませんか?」とお願い申したててでも、とにかく追い出せばいいんだが、言いにくい。こんな小娘になにビビってんだ。いい年したおっさんが情けない!と、罵られてもしょうがない状況なのはわかりきってはいるのだが、下手に突いたらまたとんでもない何かが飛び出してきそうでどうにも言いにくい。

 もうおとなしく一緒に暮らすしかないのか?そんなのはまっぴらごめんだ!だいたい、俺はこいつが赤ん坊の時も幼稚園の時も小学生の時も中学生の時も、「ちょっとお母さん!お父さんのパンツと私の洗濯物いっしょに洗わないでよ!」なんていう難しい時期も乗り越えていないんだ。こんな既に育ち切っている状態から父親として振る舞えって、できるわけがない。そもそも、俺は子供どころか、結婚して幸せな家庭を築きたいなんざ四十六年の人生の中で一瞬たりとも思ったことはない。俺は俺の好きなように俺だけのために、まさに俺の俺による俺のためだけの人生をおもしろおかしく楽しく遊んで暮らせたら充分なんだ!なのに、それなのに……。

「はぁー……」

 俺は深く溜息を吐いた。そしてもう一度、すっかり自分の家のようにくつろぎ倒している、俺の娘だという人物の方を見つめた。……認めたくない。やっぱりただそれだけだった。

 いや、まてよ。そもそも俺は一度も引き受けると言ってはいないんだ。追い出したからといって約束を破ったわけでもないし、人道に反するかもしれないが筋は通る。じゃあ、いつ追い出すんだ?そんなの今だろ!そんな時、タイミングがいいのか悪いのかLINEが鳴った。開くと親父からで、そこには『追い出したら小遣い十分の九減らすよ』と、あった。

 くそっ、その手で来たか……。

 俺はその場に両手を付いて崩れた。なんてこった。もたもたしている間にうっかり先手を打たれてしまった。ていうか十分の九って、それもうほとんどないじゃねーか。ご丁寧に語尾にハートまで付けやがって。しかも三つも。あのクソ親父め。そしてさらに追い打ちをかけるように、『頻度も減らすよ』と今度は両サイドにハート5つと改行して笑顔でバンザイの顔文字でしめたメールが届いた。……あのクソ親父。

「あー、もう、ちくしょうっ!」

 なんだよ!もう一緒に暮らすしかないじゃないか!いや、最初からもう一緒に暮らすことは決定というか、強制みたいなものだったけども!思えば親父の口ぶりも質問や相談っていうより、アレ報告だったからな。「一緒に暮らしたいって言ってるんやけど、どうする?」なんて一回も言ってなかったし。なんだよこれ。今さらながら理不尽すぎる!俺はもう泣き叫びたい気持ちでいっぱいだった。でも泣いたからと言って何も解決するわけではないので泣かない。

 ……しかたないな。もう最初から何から何まで納得がいかないが、俺の小遣いがかかっている。俺は腹を括った。括るしかなかった。こいつと一緒に暮らそうじゃないか!適当に!まぁ、考えたら追い出すのは後ででもできるし、親父には適当に理由つけとけばいい。

 さて、あきらめという名の決心がついたところで、シンキングタイムは終了だ。クエスチョンタイムに突入しよう。俺はこいつのことは今のところ『俺の娘( らしい )』という情報ぐらいしか知らないし、それがなければただの得体の知れない生物だ。何とか星から来た宇宙人だ。まず、お互いを知ることから始めねば。それに、こいつと俺が親子関係であろうがなかろうが、これから一つ屋根の下で一緒に生活するのだから最低限でもコミュニケーションを取っていかねばならない。本当はこんな奴と仲良くなんて死ぬほど嫌だが、小遣いがなくなるのはもっと嫌だ。せめて『仲良く暮らしたら小遣いアップ』だったら俄然やる気が出たのに。本当にこの共同生活は俺には何のメリットもねぇな。

 ――よし!

 俺はやっと今まで棒立ちだった足を動かし、正彦に近づいて行き、その横にドカッと腰を下ろした。今のところ、いや、どう見てもまともに会話ができるような相手に見えないが、まぁ、お互い人間同士なんだからなんとかなるだろう。

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