表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

第3話『小柳直和①』


朝のニュース番組は、全て同じ事件を報道していた。


長女と長男は、食い入るように番組に見入っている。


世の中の事情を知るのは大切だと、2人の子供の父親である小柳直和(こやなぎなおかず)は常に思っていた。




「父さん、昨日の巻き込まれたんだろ?」




長男の光が不意に話しかけてきた。


直和はキーボードを打つ手をやめた。




「そうそう。二次災害だけどな。電車が全然動かなくて参っちゃったよ。」


「昨日ヘトヘトだったよねえ」


長女の灯里が言った。


「人混みで大変だったんだぞ。それより昨日の家事、灯里に全部任せちゃってごめんな」


「ううん、いいの。って、あっ!もう9時半!!」


大きな音を立て、灯里が突然立ち上がった。ばたばたと忙しなく外出の準備を始めだす。


「どこか出かけるのかい?」


「うん、エリナと映画。四時には帰るね」


エリナ、という名は灯里がよく口にする1番の友達の名前だった。直和はにこりと笑う。


「わかった。いってらっしゃい」


「うん!」




その後、玄関の扉が閉まる音がした。


しばらくリビング沈黙が続いたあと、光が口を開いた。


「俺今日は一日中家にいるつもりだけど、父さんは?」


「父さんは今から会社に行くよ。昨日の事件のせいで会社も混乱しているみたいでな」


「そっか大変だね。コップそのままでいいよ、洗っておくから」


「ありがとう光」


光は無愛想に頷いた。手のかかった下の子も、中学二年生になって大きく成長しているようだ。




そんな我が子の成長に、直和は少し嬉しくなった。




部屋着からスーツに着替え、くたびれた革の鞄を持つ。革靴を履いて、準備は整った。




「いってくるよ、まどか」




靴箱の上の、今はいない妻に挨拶をした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ