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プロローグ『炎の男』
炎の中に男はいた。
そこは巨大ビルの地下である。
燃え盛る炎と立ち上る黒煙は、男を追う者たちの視界を奪った。
「くそ、奴がすぐそばにいるのに!」
「ボルケイドめ…!」
ハハハ……
黒衣をまとった炎の男『ボルケイド』は、悔しそうに男を睨むヒーローたちを嘲笑した。
男が右腕を高くつきあげると、炎の勢いがより一層増す。
男の笑い声が、高く低く空間内にこだました。
「逃げられる、追うぞ!」
走り出そうとしたヒーローの1人を、仲間が制止する。
「待て!退避だ!建物が崩壊する!!」
「なんだと…」
「上だ!うわあっ!!」
ヒーローたちの目の前に、急に天井の一部が落下してきた。建物の崩壊が近づいている。炎の向こうで、男の影がゆらゆらと揺れていた。
「退避しかない!」
「ここまできて…!」
ヒーローたちは撤退を余儀なくされた。苦々しく顔を歪め、階段を登っていく。
クハハハ……!
炎の男『ボルケイド』の笑い声は、崩壊する建物内でも響き続けた。
よろしくお願いします!