過去改変
箱の中身2
のり姫とさえ太郎は温暖化の原因について考えてみた。さえ太郎は最初に発言した。
「太陽の肥大化はとりあえず置いておいて、温室効果ガスの削減に早くから取り組むべきなのではないでしょうか。」
のり姫はもっともなことだと大きく頷いた。そして言葉を付け加えた。
「CO2、即ち二酸化炭素の削減ですね。」
二人の最初のミッションは二酸化炭素の削減に決まった。その後もいかにガスを削減するのか案を出し合った。電気を作るときにどうしても発生する。化石燃料を使わないことが鍵になるのではないだろうか。さえ太郎の時代では地球上の石炭はほぼ取り尽くされ、石油もある学者によると、あと五十年とも言われている。石油は発電だけでなくあらゆるものの原料になっている。車を動かすためのガソリン、プラスチック製造など生活には石油は欠かせない。
「化石燃料に頼らない生活は無理でしょうか」
さえ太郎は提案した。それにはのり姫も賛成してくれた。
「それでは化石燃料の代わりとなるものを考えましょう。」
さえ太郎が何かを思い出したようにハッとなった。
「のり姫様!バイオ燃料はどうでしょうか?」
さえ太郎の時代ではようやく実用化されたところで、トウモロコシなどの穀物から作る燃料である。さえ太郎は続けた。
「私の時代ではこの燃料でバスが走っています。しかし、まだまだ試験段階で普通の車はガソリンですけど。それに問題は多いみたいです、生産コストがガソリンより高くていまひとつ普及が伸び悩んでいます。さらにトウモロコシで燃料製造すると、今度は食糧不足を起こすそうなんです…。」
のり姫はそれを聞いて、少し考え込む仕草をしていた。そして自分で何かを納得するように小さく頷いていた。
「では2つの案を合体させましょう!」
さえ太郎は首を傾げていた。
「バイオ燃料はいい案だと思います。その問題点ならいい解決方法があります。」
さえ太郎は目を輝かせてのり姫を見ている。
「トウモロコシを効率よく生産できたら解決できると思います。私の時代では海底に都市があります。居住空間は限られていて、その中で食料を作っています。それを可能にしているのが遺伝子操作です。栽培技術も高くなったのですがこの遺伝子組み替えトウモロコシはひと月に二回は収穫できます。たくさん収穫できれば生産コストは大幅に抑えられると思います。もちろん食糧不足の心配もなくなります!」
なんと夢のようなことである。バイオ燃料の案と遺伝子操作の技術を合体させることで石油に依存しない世界が作れそうな雰囲気になっていた。二人は早速この二案を持って、化石燃料を使い始める前の時代の地球に向かうのであった。
のり姫とさえ太郎は時代を遡り、当時の人達に新しい技術を授けた。これで歴史の改変が起きるだろう。
「本来、歴史の改変は危険な行為ですが、地球消滅には変えられないです。この変革によってどうなったか、今度は未来を確かめに行きましょう。」
「まさか…。」
のり姫とさえ太郎は目を疑った。のり姫の時代のように水没こそしていないが辺り一面ジャングルのようになっていたのだった。ビルは建っているが、植物に侵食され、いまにも倒壊寸前である。道路には倒木があるし、根っこでアスファルトは大きくめくられている。
「いったい何が起きているの…?」
のり姫の顔は険しかった。とにかく周りの人に話を聞いてみた。話を要約するとこうだった。
【バイオ燃料は画期的で、温暖化は防げた。】
【遺伝子組換えトウモロコシも食糧不足を招かず、バイオ燃料生産をスムーズにできた。】
しかし、
《産油国の反発が戦争を招いた。》
《戦争の混乱により、遺伝子操作の事故が起きた。それは地球上の植物の異常な成長を引き起こした》
植物の異常な成長がこのジャングル化した原因であることを二人は理解した。植物の侵食は激しく時間単位で緑が街を飲み込んでいくようである。伐採、焼き払いも間に合わないレベルに成長してくる。
「なんてことなの…。」
さえ太郎は大いに責任を感じているようである。しかし、のり姫は前向きだった。
「変わってしまった未来は仕方ありません。温暖化で水没することは防げたのです。更なる案を考えましょう。」
さえ太郎はのり姫の顔を見て頷いた。
「はいっ、私も諦めません!」
のり姫はやはりこの子で間違いなかったと自分の胸に手を置いた。強がってはみたが内心は不安でいっぱいである。「さえ太郎がいてくれてよかった…」そう心の中で呟くのであった。
二人の冒険はさらに続くのであった…。




