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76)あたまを石畳にすりつけて感謝するしかなかったんだ

ひとつひとつが持つクオリティや絶対的技巧の有無はさて置き、これだけ詩を書き連ねてきていると、作者自身にも、好きな詩と、残念ながらそうでない詩がある。

書いているときは、基本どの詩のことも大層勘違いをしてこれはいいんじゃないかと思えてしまっているんだが、それは、『真夜中に書くラブレター現象』と言ってしまっていいもので、実際には書き終えて翌日あらためて見直してみて、執筆時と同様の感覚で味わうことができる詩って、皆無といってしまっていいほどだ。

ただ、その中でも、個人的に好きな詩とそうでない詩があきらかに存在してしまっている、ということを言っている。

その中でも、この詩は、す(て)きな詩です、って、言っている。

でも、それはただの私個人の個人的な感性の話なので、あまり気にしないでください(なら、書くな、とか、あまり責めないでください)とだけは言っときます。(また出た、謎の、ラストで出てくる『ですます調』)

というわけで(京都に『というわけで』とゆう名前のホテルがあって、けっこう印象的だった、鴨川沿いで目立ってた、隣に『黄色いクジラ』ってホテルもあって、それもまた覚えてる、両方とも、ネーミングの勝利ではあるよなぁ、いまでも覚えてる)、本文、お読みください。

でわ。


あの日、

蛇のように

心も体も冷え切ったあたしに、

肌をあたためて

あげるから信じてねって

姫さまがおっしゃってくれるから

「ありがとうございます、救われます」

あたまを石畳にすりつけて感謝するしかなかった。

ただ、

今でもあの時のこと思い出すと、

泣いてしまいそうで困るんだ。


生きていくと

色んなことがあるよね。


昨夜も凍えた人が

「幸せになるには、なにを

どうすればいいのですか?」

姫さまに尋ねるんだ。


睫毛を伏せて

すこし震えていた姫さまは

「それがわからないのは、

つらいことですね。

けれど、あなたの絶望は

わたくしが聞かせて頂きます。

聞かせて頂くだけなので、

あまり意味はなく、

それでは、生きいく上で

なにが正しいのかの答えにも

迷ってしまいますよ、ね?

これからいっしょに

考えていきません?」


それがきこえたのか、

凍えた人は

依存心は捨てますと反省しながら、

「…………はい、お願いいたします」

ちいさな声でそう告げた。


しばらくすると

けもののような、

かすれた嗚咽が聞こえた。


姫さまは

なにも聞こえないのか、

「今夜はもう眠りましょうか、

ねえ、眠ってしまいましょう?」

そして、優しくほほえみかけてくれるのだ。

この冷たい、暗い世界に

あかりを灯すように。


「わたくしも、もう眠りますね」


いうとどうしてこんなに

素早く眠れるのか

不思議なんだけど、

今夜もまるでねむり姫のように

もはや近寄りがたい

白い陶器のような綺麗な寝顔で眠る。

でも、寝息だけは

聞いているだけで

幸せになれるくらいの可愛さで、

この

あたしなんかが不遜にも

寝言でいいから

名前を呼んで頂けないものかと

焼けつくほどの願望を

もってしまったりする、

恥ずかしながら。


さとられては、

ここに居させてもらえなくなる気がして

つとめて冷静に、就寝の挨拶を行なう。


「姫さまのみこころのままに、

こんやは、おやすみなさいませ」






長々しいまえがき含めまして、最後までお読みくださり、誠にありがとうございます。

またお会いできる日を楽しみにしています。

でわ。

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