50)かなしい嵐め、かなしい貴女め。
二作を、くっつけてみた。
おんなじようなやつだし、同じ日に書いたやつだし。
あと、これが一番の理由だけど、一作じゃ短すぎるし。
でも、けっしてふざけてるわけではないので、そこんとこ、よろしく。
やで?
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(かなしい嵐め)
真夜中に雷が鳴り
耳の奥でなけなしの勇気が
震えている
近くの荒れた海で
波が小舟を飲み込む
すっかり怯えてしまった猫は
炬燵の中で目を細め
嵐め、嵐め、嵐め、と
夜通し鳴き続けている
倒れてしまった自転車を
朝になれば起こしてあげて
新しい一日が来る奇跡を
噛み締めることができるだろうか
それでも捨てなかった
なけなしの勇気いがい
すべてを手放した、嵐一過の朝
(かなしい貴女め)
真夜中に花束でぶたれ
その白く凍てついた頰が
濡れている
ドラゴンが嵐の空を翔ぶのを
黙って見上げている
すっかり怯えてしまった貴女は
恐怖の嗚咽をこらえながら
竜め、竜め、竜め、と
夜通し走りまわっている
壊れてしまった眼差しを
もう一度だけ助けてあげるから
奇跡のような春の陽気の微笑みを
もう一度だけでも
魅せてくれないだろうか
それでもう誓ってしまってもいい
貴女を幸せにしてあげる
それでもう世界から逃げてもいい
私も幸せになれると思う
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お読みくださり誠に有難うございます。
またお会いできる日を楽しみにしています。
でわ。




