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127)真っ赤に染まる
てっぺんに
鏡みたいな満月が浮かんで
なんの想い出も浮かばない夜
てのひらを
透かしても感じない光の速さ
その想いさえも感じない私の血を流す
そして横にいるあなたの唇をみる
真っ赤に染まった
くれないの花を
幼いころ田舎の田んぼのあぜ道でみた
学校帰りにカラスが群れ飛ぶ下で
せいどういろの蛇もみた
ただひとりぼんやりとみていた
たぶん微笑んで
遠くの山に囲まれいる
田園地帯であり
カラカラと風がなにかを揺らす音がする
町だった
そのかぼそげな背中を追った
どんなあたたかさを求めたのかは
忘れてしまった
唇がそっと言葉を落とした
宝石の音を
聴き損なった私の
上をゆっくりとカラスが飛びすぎてゆく
くちづけを
したいなと思った
小さな町の
小さな公園で
てっぺんに
凶器みたいな三日月が浮かんで
どんな希望も語らない夜
てのひらに
突き刺さる尖った光の針
その痛みにさえ悲鳴をこらえている私のもの
あなたの唇を奪いたい
真っ赤に染まった




