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64)冬よ、さらば
前の日の
昼間、日向なら砂漠ほどの快晴だったが
その夜は火星の岩かげのように寒かった
午前4時半の
身体の芯から来る小さな震えは
本当なら
1人で耐えなきゃいけないけれど
彼女が
いてくれたので
顔(凍ったみたいなね)見合わせて
「表情、ないもん」
ってゆびさしあいげらげら笑いたくても
寒さのあまりに笑えなくって
「ちょっと寒いね」
って2人キツく抱きしめあい
そんな幸せな朝が、
あの頃はあったってだけの、話、
それが、最後の寒かった冬の話。
そんな愛で、私のこころに入り込み、いまなお、居座り続けてる彼女、ほんとうなら、私ごときが、拝謁許されるわけない高貴な、やんごとなき姫君だとの自己申告、話聞くだけ聞いて、笑って済まして、でも、全然不快じゃないのは、ほんと彼女の人徳ってぇの?
アワセテクレタコトダケ感謝シテイマス。
その人のためなら、死ぬのもへっちゃらと、思わせてくれる愛する人に逢わせてくれて、それだけで、すべての世界に、感謝します。
して、後悔いたしません。
もう、
私の季節に冬は無いから。




