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おおきなとさか
たいせつなものを失ってしまった。
まもることさえできなかった。
「……泣いたらダメだ」
なみだを流すまいと歯をくいしばり、いたむ心を手でおさえつけます。
男の子はなんとかおうちのところまで下りれないかとかんがえることにしました。
男の子はがけになったお庭をみまわします。
なんどもがけ下をのぞき込みます。
ほんとうは今すぐにでも鳥のようにとびおりて下までいきたいのですが、はばたくことはできません。
おちてしまわないようにちゅういしながらぐるぐると考えます。
そのときでした。
くずれたおうちの赤い屋根がうごいたのです。
男の子はびっくりしておくちをあんぐりとしました。
ちょうどびっくり箱が開くように、屋根が開いて何かがおうちから出てこようとしているのです。
男の子はいったいなにが出てくるんだとドキドキです。
そして、がらがらと屋根がわらをおとしながらひょこりととびでてきたのは。
黄色くておおきなとさかをひとつのせた、これまた黄色くておおきなオカメインコのあたまでした。