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くずれるせかい

 金魚たちがどこかへと泳いでしまったとき。

 どこからかとてつもなく重く、かなしい音がこちらへ近づいてきました。


 音はおおきなゆれをともない地面をつたいます。

 うみの波にゆれるおふねのように、街にならぶおうちははね上がります。


 ひびが入り、はなればなれになるこみち。

 ばたんと倒れるおうちのかべ。

 あわてふためくひめいと助けのこえ。


 男の子は立っていることができずしゃがみこみます。

 しかし、女の子と、インコたちと、お母さんとが心配です。


 はげしいゆれの中、すこしでもおうちに近づこうと、手とひざをついて前にすすみます。

 

「チカちゃんッ!!」

 

 男の子は、くずれるせかいで大切な人たちに手をのばします。

 しかし残念なことに、その手がとどくことはありません。


 男の子と女の子とオカメインコの世界。

 ふたりといっぴきにとってのたいせつな世界は、そうやってこわれてしまいました。











 

 ゆれは、長いようで短いものでした。

 しかし、それはせかいをこわすのにじゅうぶんな時間でした。


 男の子は、少しのあいだ気をうしなってしまいました。

 でも地面のゆれがおさまるとすぐに目をさましました。


 男の子があたりをみわたすと、たくさんのがれきと、死んだ魚たちがころがっていました。


 男の子は、むねいっぱいに広がるかなしさでしゃがみこんでしまいそうになりながらも、がれきの山をかき分けて、おうちのほうへと向かいます。


 ですが、男の子はおうちに入ることができませんでした。

 男の子がいたお庭と、女の子とかんたたちがいたおうちとは、大きな地われがとおせんぼしていたのです。


 さらにおうちのあるほうの地面は、男の子がいたお庭よりもふかく、ふかくしずんでしまっていました。


 男の子はわれたお庭のさきっちょへふらふらと歩いていきました。

 切り立ったがけのようになったお庭のさきから下をのぞきこむと、くずれたおうちがみえました。

 

「どうして……なんで……」

 

 現実の残酷は、なんで僕たちの優しい世界までも壊すんだ。



つづきます。

これは救いのある温かなものがたりです。

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