卵のおうち
男の子と女の子が決心したその日から、だいじな卵を“ふか”させるための生活がはじまりました。
男の子のへやに、ちょくせつお日さまが当たらないように気をつけます。
そうしながら卵のためのおうちを二人でこしらえました。
お母さんのアドバイスをもらって、あつくなりすぎないように布をかぶせた小さなカーペットをもってきました。
そして温度計もいっしょにおいておきます。
さらに卵がおちないように木でできたわくも作りました。
卵は何度くらいにたもたなければいけないのか?
どれくらいの時間で卵をひっくりかえすのか?
もしひびがはいりはじめたらどうすればいいのか?
分からないことはもちろんあります。
男の子はいっしょうけんめいお母さんからおそわったことをおもいだします。
女の子も男の子のおうちにあった本で鳥さんについてしらべました。
そのおかげでいろいろとわかったことがあります。
温度のほかに、湿度も大切なことがわかりました。
女の子はいそいでおうちに戻り、ビーズを入れていたうつわを見つけだして男の子のうちにもってきました。
それにきれいなお水を入れて、卵のちかくに。
これであんしんです。
どうしても分からないことがあった時は、二人でお母さんに聞きにいきました。
すると、男の子のお母さんは優しくこたえてくれたり、ときにはヒントをおしえて二人に考えさせるのでした。
素敵なおうちができたのはおひるまえでした。
すっかりお日さまはお空たかくのぼっています。
男の子のへやには、外からあたたかな日差しとおだやかな風が入ってきます。
その風が、いままでいっしょうけんめいだった二人の頭ををやさしくなでました。
「とりあえずこれでひとあんしんだね」
「うん、けっこうたいへんだったね」
「おなかすいたね」
「ねー」
二人がそう話していると、お庭からお母さんが二人をよびました。
窓から見えるお庭では、木でできたテーブルにお母さんの作ったお昼ごはんが用意されています。
食器を運ぶお母さんの周りを、エンゼルフィッシュのむれが気持ちよさそうにただよっていました。
おいしそうなスープの匂いがします。
二人は卵が大丈夫なことを確認すると、手をつないでお庭にかけていきました。