手をとりあって
男の子はしんけんでした。
女の子が息をきらせてもってきてくれた卵をみつめます。
さて、どうしようかと男の子と、男の子のお母さんは腕をくんでかんがえました。
女の子は心配そうなかおをして二人をみつめます。
男の子とお母さんは、同じしぐさでウンウンうなりながら頭をひねります。
しばらく考えていたお母さんが口をひらきました。
「よし、チカちゃんといっしょに二人でそだててみよっか」
「えっ」
「えーっ」
男の子と女の子は同時にびっくりしました。
二人ともできるかなあと不安です。
「ちゃんとお母さんもおてつだいするからね、やってみよ」
男の子は、親鳥さんとはぐれ、弱ったひなさんや、わけあって飼い主さんとはなればなれになった鳥さんを立派にそだててきました。
だけど、お母さんといっしょに面倒をみてきたからこそ、立派にそだてることができたのです。
今もお母さんと一緒にほごし、育てた一匹のセキセイインコがおうちにいます。
「もな」という名前の、白と青のきれいなとりさんです。
ちょっとからだが弱いところもありますが、男の子とお母さんの努力で、いげんある立派なおとなの鳥へとせいちょうできました。
女の子が遊びにくると、だいすきな鈴をチリンと鳴らしてあいさつします。
男の子は、もなのように立派にこの卵を育てることができるのだろうかとかんがえます。
小さくても、まだ生まれてなくても、このたった一つのたいせつな命をははどりからたくされるのです。
せきにんじゅうだいです。
「まようことはないよ」
女の子が力づよく、むねをはっていいました。
女の子の頭におさめられた花冠がちょっとずれちゃいます。
それを男の子がさりげなくなおしてあげました。
「そう言うけど、だいじょうぶかなあ?」
「二人でだいじょうぶにしよう!」
それなら何ももんだいないよと、女の子は不安げな男の子をはげまします。
そして男の子の手をとってぎゅっとにぎりました。
女の子の手をにぎりかえしながら男の子は思いました。
迷ったとき、こわくなったとき、いつだって女の子がそばにいてくれました。
いつも手をのばして、男の子の手をにぎってくれていました。
そうすると、からだのおくから力がわいてきて。
いつだって女の子のためにがんばろうと思えたのです。