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愛は決して絶えない。

 独り残された僕は、日々を涙とともに過ごした。

 いつかその傷は癒えると誰かが言っていた。


 けれど痛みは癒える気配さえなかった。

 心が壊れていくのが自分でもわかった。


 食餌が喉を通らないのだ。


 母親に心配をかけまいと笑顔は取り繕っていた。

 しかし身体は痩せ細るばかりだった。


 下腹部でなにかが蠢くような感触。

 絶えず早い脈拍と、うまくできない息継ぎ。


 やがて。


 この世界の悲しみばかりが目につくようになり。

 自分がなぜ生きているのか、なぜ生まれてきたのか。


 どうして死ねずにいるのか。


 愛する人を守ることのできないおが屑のような僕が。

 火種になることのできない出来損ないが。


 今もなお、生き延びているのは何故?











 そうして僕は、嘆きながら本当の眠りについた。



 そこには、


 意思も


 感情も


 希望も


 夢も


 正しさも


 痛みも


 喜びも


 愛も


 喪失も


 剥奪も


 憎しみも


 悪も


 幸福も


 存在しなかった。

 何も無いことさえ自覚できない。


 正しい無。

 痛みも安らぎも感じることができないのなら、それは安らぎと言えよう。

















 やがて、世界を作った神様は。


 なんの罪もなく命を奪われた人間を。

 大切な人を奪われ涙に暮れながら死の眠りについた人間を。


 覚えていた。

 ひと時でさえ忘れることがなかった。


 全ての人間が感じる痛みや涙を、

 同じようにその身に感じて同じように涙した。


 そして神様は、悪と、罪と、死を一掃し。


 死と悪から命を奪われた人が、

 再び幸福に生きることができるよう。


 命を再び与えて生き返らせた。


 












 再び立ち上がった僕は。


 穏やかな草花の向こうで。


 僕を待つ愛しい人の元へ歩き出した。
















 そこには嘆きも、叫びも、苦痛も、もはや存在しない。


 悪は去り、不完全さは消え失せ。

















 そして。


 愛は決して絶えないのだ。













私の物語を読んでくださり。

そして私と愛する人たちの長い旅にお付き合いいただき、本当にありがとうございました。




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