夢から夢へ
「……そうねぇ話すべきかしら」
ぼくのへやにあったクラシックギターは、見覚えのあるものだったけれど。
かんがえてみても、どうやってこのギターを手にいれたのかを思いだせなかった。
ぼくのものだけれど、ぼくのものではないような。
そんなふしぎな気分がおちつかなくて、ぼくはお母さんにギターを見せることにした。
すると、お母さんはくびをかしげてこまったようなかおをした。
「そのギターはね、ナルの幼なじみのお父さんからもらったものよ」
がた、ごとん。
お母さんのそのことばをきいたときに、ぼくはあたまをひどく床にうちつけながらたおれてしまった。
「いったいどうして……」
__そう呟くお母さんの声が聞こえた。
そして僕は、ゆっくり目を開いた。
ひどく取り乱したお母さんの顔がそこにあった。
僕はまたもや入院することになってしまったらしい。
ベッドの上から見上げる懐かしい天井が見えた。
意識が戻るとすぐに顔なじみのお医者さんが診察にきた。
お医者さんの話によると、突然起こった心因的な衝撃から僕の体は心を守るために意識をシャットダウンさせたそうだ。
すぐに退院できるとお医者さんは話してくれたが、大事をとって1週間ほど入院しないといけないとのことだった。
診察が終わった後、ひどく動揺していたお母さんに謝った。
だけどお母さんは逆に私のせいだと自分を責めるばかりだった。
いたたまれない気持ちになりながらも、僕の頭は以前よりもはっきりしていることに気づいた。
病室の暗い雰囲気を変えようと、自分自身の変化を話すと、たしかにそうねと不思議そうにお母さんは首を傾げた。
たしかにお医者さんも、僕がスムーズに話ができることにとても驚いた顔をしていた。
倒れる前までの僕は、年齢よりも低い知能になっていたらしい。
……しかし、このように突然『僕』を取り戻すようなことはあるのだろうか。
クリアな頭で、僕はいろいろと考えたり、思い出したりすべきことがありそうだ。




