おだやかに歌う
おまたせ
あの夢をみてから、ぼくはあの子のことをいつもかんがえている。
はっきりとは思いだせない。
だけど。
思いだせなくても、ぼくはあの子のことを想っている。
想っているからこそ、はっきりと思いださないと。
「どうしたら……」
「ぴぃ」
そんなぼくのひとりごとに、いっぴきのオカメインコがへんじをした。
いつのまに。
シオンがへやのすみにおいてあるギターの上でげんきにないていた。
ひとこえないては、ギターをコンコンとくちばしでノック。
そしてぼくのほうを見つめて、またひとこえないて。
ぼくはギターをだきかかえた。
するとシオンはギターからぼくの肩へととびうつった。
ギターには3本ずつ、2しゅるいの弦がはられている。
さかなつりで使うようなとうめいにひかる3本。
そして10円玉みたいな色のはりがねのような3本。
ギターのなかでも、いちばん優しいおとをたてるぼくのクラシックギター。
ゆびをかけると、弦がくっ、くっ、とないた。
そのままはじくと、ぽろん、と音がひびいた。
ぼくはゆっくりと、あたまの中にあった音をなぞった。
ギターは穏やかに歌をうたう。




