海をめざす
「目をさますことはかんたんなようでいて、とてもむずかしい」
白いイルカたちはゆっくりとはなしはじめました。
空気のなかにひそむことばをえらぶように、イルカたちのかしこい目はきょろきょろとうごきます。
「なんども言うけど、夢はとてもやさしいものだ」
「夢を見つづけることで、じっさいに君の心はかいふくしつつある」
「しかし、現実によこたわっている君のからだは、夢をみるだけではかいふくしない」
「だから早く目をさませなければいけない」
「「心をかんぜんになおしたとき、君は目をさますことができるだろう」」
ふっ、とひといき。
イルカたちは女の子のまわりをぐるりとひと回りして、そしてふたたびもとにもどりました。
女の子は、イルカの話がむずかしいので、まゆげをよせていっしょうけんめいにかんがえます。
そのかおを、女の子のかたにのってたかんたが見あげています。
「ぴっ、ぴっ」
自分のわた毛がはなに入ったようで、かんたは小さくくしゃみをしました。
くしゃみをしてはずかしくなったのか、かんたは女の子の髪の毛にあたまをつっこみました。
女の子は、かんたのせなかをよしよしして、そっとほほえみました。
イルカたちとあそんでいたもなも、女の子のかたにもどってきました。
鳥たちは、女の子の心のへんかにびんかんです。
だからこそ、男の子がいなくなったあとも、ずっとこの2匹は女の子からはなれずにいるのでしょう。
いつくしむように、そのようすを見ていたイルカたちはふたたび口をひらきました。
「君のたいせつな記憶をたどって、そのさきにあるおおきな海をめざすんだ」




