なまえをよんで
お母さんのはなしによると、ぼくのかいふくは初めはゆっくりとしたものだったらしい。
だけどすぐに、じこで眠りにつく前とかわらないくらいに歩けるようになって、話もできるようになった。
小鳥がいつまでもとびかたをわすれないように。そんなふうにお母さんは言っていた。
もとの生活にもどってからも、ときどきぼくのしんぞうは傷んだ。
それはねているときだったり、がっこうでべんきょうしているときだったり。傷むときにはかならずなみだがこぼれそうになるけど、ぼくはなるべく泣かないようにがまんする。
ぼくが泣いてしまうと、だれかがもっと泣いてしまうんじゃないかと思うから。
……でも、いったいだれが泣いてしまうんだろう? お母さんは、そのしんぞうの傷みは気にしなくていいと言ってくれるけど。
それと、うちでかっているオカメインコのシオンを、ぼくはときどきなまえをまちがえて「かんた……」とよんでしまう。
するとシオンはこまったようにひよ、とくびをかしげてへんじをするからぼくはごめんねとあやまる。
なんでかんたとよんじゃったんだろう?
ぼくもシオンといっしょにくびをかしげてかんがえこんでしまう。




