夢みるように
おたがいのぶじをかくにんできたところで、男の子は鳥さんたちやお母さんにも声をかけます。
そのようすを、女の子と男の人はながめていました。
「ごめんね、迷惑かけるね」
とつぜん男の人が女の子にあやまったので、女の子はきょとんとしました。
「ほんとよ、めいわくかけっぱなしでちゃんとしなさいよ」
女の子は少しえらそうにうでを組んで、そう答えました。
「ちゃんと幸せになるから」
だからあなたも幸せになってよ、と女の子は小さな声で言いました。
「うん」
なさけない顔で男の人はうなずきます。
そして、首もとの指輪をそっとなでました。
「私に似た人を待たせてるんでしょ?」
「そうだね、大切な人だから」
早く行かないと、とつぶやきました。
「で、あたしはどれくらいここにいなきゃいけないの?」
たくさんの花と、きれいな魚たちが空をおよぎ、鳥さんたちがうたう、温かなこのせかい。
ここが嫌いというわけじゃないけど。
あたしたちが生きるべきは、夢のなかじゃない。
幸せになるためには、目をさまさないと。
少しのあいだかんがえると、男の人は女の子のかおを見ながらこたえました。
「それは……私にもまだ分からない。でもあの子が必ず君を見つけ出してくれるよ」
それだけは約束するよ。
と、男の人は言いました。




