雪音
少年は村で開かれる会合に出席するため、階段を降り、外へ向かった。湿気を吸って重くなったコートを羽織り、立て付けの悪くなった扉を開けると、その隙間から、ちらちらと、雪が舞い込む。
突然の雪に、少年は思わず、手で顔を覆う。
雪が降っているようだ。少年は手を払い、顔を前へ向ける。ゆらゆらと、宙を舞う雪。外には、限りなく白い景色が広がっていた。
右も左も、見渡す限りの白。
その白を引き立てるアクセントだろうか。揺らめく雪の中に、住居を示す黒い点がぽつぽつと点在していた。
少年が足を踏み出すと、硬い氷の感触。
地表には、周りと比べ、削り取られたかのように凹んだ部分が遠くまで続いていた。
これは、雪が何度も、何度も、踏み固められてできた氷の道だ。少年にとっては馴染みのある、気の知れた道だった。
さくり、と新雪を踏んだ音がした。
少年は足元を見る。
少し黒ずんだ、氷の道。地表は相変わらず、硬い氷のままだ。音の発生源は少年ではない。少年は音のあった方角へ目を向ける。舞い散る雪のせいか、遠くの景色はおぼろげである。少年の見える範囲には、氷の道と雪だけだ。他に生物らしい気配はない。
少年は不思議そうに首を傾げた。
少年は、新雪の上に足を踏み出した。さくり、と小気味の良い、新雪の音。先程よりも小さな、雪を踏む音。
「誰かいるのか」
冷たい静寂。少年の呼びかけには誰も答えない。ただ雪が虚しく降り積もるだけ。それ以上何も変化もない。
「誰か、いるのか」
少年は更に語気を強めた。それにも関わらず、誰も答えない。周りは相変わらず、静寂で包まれていた。
少年は数分迷った後、考えても仕方がないと思ったのか、会合のある村長の家へと足を進めた。




