26/33
幕間3
目に映るのは意識のない人形たち。
何も考えず、何も感じず、何も知らない。
何のために産まれてきたのか。
何のために生かされているのか。
疑問にも思わない。
定められたレールの上をただただ歩いているだけ。
どこへ向かっているのか。
行き着く先に何が待っているのか。
そんなことすら思い浮かばないだろう。
目の前には無垢で愚鈍で忠実な人形。
その人形にそっと囁きかける。
花の色を。
春の音を。
そして、ここにはない景色を。
その言葉に、その情景に、その美しさに、心を奪われる。
その様子がたまらなく愉快だ。
自分が利用されているだけなのだと、
ただの道具に過ぎないのだと考えもしないのだろう。
何もかもがうまくいっている。
彼らが春をもたらしてくれる。
色づいた光景を見せてくれる。
春はもう目の前にある。




