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(今の時点で信頼できる売却先なんて思いつかないし、高額買取してくれるような店ならなおさらルートを明かせないようじゃ話にならない)
裏道の違法道具屋でなら、今のミツキ相手でも買取りはしてくれるかもしれない。でもその場合、正規の値段での売買は見込めないだろう。
(贅沢言うつもりはないけど、せっかくなら有効に使いたいんだよねぇ)
それに、本音を言えば復活の花冠自体、そうたやすく手放していいものではない気がしてきているのも事実だった。具体的な理由を問われれば、上手く言葉にするのは難しいのだけれど。
まぁそんなふわっとした理由ながらも、ミツキ的には花冠を売ることには消極的だったのだ。となれば、今回の高額コイン入手の機会を逃す手はない。
(…………とりあえず、自分の属性を調べてみてから考えようかな)
ミツキは書物を閉じ、立ち上がる。属性自体は武器屋で調べてくれるらしい。
(そもそも聖属性に向いてなければ、話にならないわけだし)
書物曰く、使い物になるのは精々三番手くらいまで、とのことだった。それもまた人に寄るが、大体はいちばん自分の性質に合っている属性を武器に付加し、それを鍛えていくのが一般的な方法なのだそうだ。
(出来るだけ距離をとって攻撃したいから、やっぱり付加するとしたら銃になるかなぁ)
良い武器があれば買い替えようと思っていたミツキだったが、どうやらこの世界では武器とは買い替えるより鍛えて強くしていく物らしい。(と、先ほど読んだ属性攻撃の本に書いてあった)勿論鍛えていくにもコインが必要になるわけだが。
ちなみにミツキの銃は現時点で全く鍛えていないので、レベル的には1のままである。それでも攻撃が有効なのは銃そのものの性能と、ミツキのステータス補填のおかげなのだろう。異常ステータスさまさまである。
「ヴェルナー、ちょっと出かけてくるね」
ミツキの足元で蹲っていたヴェルナーに声をかけ、ミツキはひとり宿を出る。
ダンジョンから帰ってきたばかりで、さすがにヴェルナーもお疲れ気味のようだった。ミツキ自身もそれなりに疲れは感じていたが、動けないというほどではない。
(ほんとに、健康な体って素晴らしいや)
ミツキの中ではこの程度の疲労は、苦の内に入らなかった。
(だってまだ、手の足も自由に動かせる)
けれどそれを他の人にも強要するつもりはない。なのでミツキはひとりで鍛冶屋に行くことにした。ヴェルナーの属性は、また後日に調べてもらえばいいのだ。
(獣にも、専用の武器を作ってくれる人がいるみたいだし)
これも属性攻撃の本に載っていたのだが、どうやら魔獣や魔鳥の類にも武器を持たせることは可能らしいのだ。それによって攻撃力は飛躍的に上がるらしい。
ただそれにはその獣そのものの特性を充分に理解し、発揮させる為の技術と経験が必要なのだそうだ。
よって獣専用の武器や防具を生成している職人は、かなり限られた人数しか存在しないらしい。
(その上、コインもそれなりにかかるってわけね…)
やはり、何はなくともコイン、コイン、コイン、である。
ミツキはため息を吐いて、街の南方向にある鍛冶屋へと歩き出した。




