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(これはこれでとっても嫌だー!)
ミツキは心の中で悲鳴をあげながら、目の前のカマドウマみたいなモンスターに銃を乱射する。
湖畔とはいえ、奥に進むにつれ出てくるモンスターの中にはこの手の節足動物系も増えてきていた。
こちらには物理攻撃が有効だが、何せ的が小さく当て難い。器用さがカンストしていなければ銃なんて無茶な攻撃方法はきっと選ばなかったことだろう。
(しかもレベルが拮抗してるせいか、わりとエンカウントしやすいー!)
これまでの経験上、レベルが5以上離れると低レベルのモンスターは寄ってこなくなる。が、このカマドウマのレベルはミツキとさほど離れていない為、さっきから高確率で出くわしてしまうのだ。
しかも厄介なのはカマドウマ単体で出てきてくれないことである。カマドウマ+ナメクジ系モンスターのセットで出てこられると、もう最悪だ。
カマドウマの方にはヴェルナーの攻撃が有効だが、いかんせんなかなか当たらない。ヴェルナーの命中率が低いせいもあるだろうが、鑑定した結果、回避率が以上に高いモンスターらしいのだ。
かと言ってナメクジ系には物理の効きが弱い。よってミツキは優先的にナメクジ系の敵から倒すことにしているのだが、こっちはこっちで倒すのに時間がかかってしまう。
結果として、戦闘終了するまでに最低でも5発くらいの攻撃を受けるハメになってしまうのだ。こうなるともうヴェルナーの方はひたすら回復、もしくは防御に徹してもらうしかなくなってしまう。
おまけにこのカマドウマ、攻撃を受けると中確率で麻痺状態に陥ってしまうのだ。幸い麻痺回復の薬草はかなりの量採取出来ていた。先ほど通ってきた道なりに、ぎっしり群生していたのである。
その為ミツキが麻痺に陥った場合にはヴェルナーが、ヴェルナーが麻痺状態になった時にはミツキが、といった具合になんとか回復出来ていた。でなければとっくに引き返していたところである。ミツキもそれほど向こう見ずではない。
(……とはいえ、そろそろ潮時かなぁ)
見たこともない薬草やアイテムがじゃんじゃん入手出来る為、ミツキとしてもなかなか切り上げ時が見つけられずにいたのだ。
(あんまり欲をかきすぎても、ねぇ…)
このダンジョンに入ってから、既にレベルは5も上がっていた。出現モンスターの中には町中で売ればそこそこ高値で買い取ってくれそうなアイテムや、高額なコインを落としていく物もいて、かなり財布(?)の中身も潤ってきたところである。
これ以上奥に入るには、相応の装備と魔法レベルを上げてからじゃないとキツイかも。そんな風に考えていたところで、ふとミツキの視界に宝箱が映った。
ダンジョンの中にはこうして時折、宝箱が出現する。宝箱には一度きりのものと、期間を開ければ再び補充されるタイプのものと二種類がある。
見た目は全く同じなので、開けてみるまではどちらなのかはわからない。前者はレアアイテム、レア装備なんかが入っていることが多く、後者はコインや薬草、食料などが多い。
(これで三つめか)
このダンジョンに入ってからミツキが見つけた宝箱はこれで三つ目である。ひとつめは4000コイン、ふたつめにはHP500回復の薬草が×3入っていた。
(今日のところは、この宝箱を開けて終わりにしよう)
そう心に決めて、ミツキは宝箱に手をかけた。
その瞬間、視界は真っ黒な闇で覆われた。




