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“精密射撃 スキルレベルが10になりました。急所射撃 を習得可能になりました“
戦闘終了後に突然聞こえてきた例の声に、ミツキは「えっ」と瞬きを返す。
「急所射撃?」
派生スキルだろうか、とミツキはスキル画面を開いてみる。すると、声の通りに精密射撃の下に急所射撃という文字が浮かんで見えた。
鑑定してみると、敵単体に強力な銃属性攻撃。更に命中率・防御率の低下。と出てきた。
(後半のふたつは、敵ステータスの低下ってことでいいんだよね)
これは願ってもないスキルである。今まではミツキの異常ステータスのせいでどのモンスターもワンパン、もしくは銃弾一発で倒せてしまっていた。が、ここにきて雲行きが怪しくなっていたのだ。
(正直、燃費が悪い…)
今まで銃弾一発で倒せていたものが、このダンジョン内では最低でも三発は必要となってしまっていた。
こうなると、当然1ターンでは片付かない。なのでそれなりに攻撃をもらってしまうようになっていたのだ。
いくら自動回復スキルがあるとは言っても、攻撃をくらえばそれなりに痛い。そして大概に於いてここのモンスターの攻撃は水魔法に特化していた。なんというか…結果攻撃を受ける度に水浸しにされてしまうのだ。
(HP自体は回復されても、びしょ濡れ状態は改善されないわけで…)
ミツキはぐしょぐしょのまま応戦するハメに陥っていた。
(弓矢も早々に底をついちゃったしなぁ)
矢だって無限に湧いて出てくるわけではない。まさかこんなに必要になるとも思っていなかった為、用意が甘かったことは否めない。
結局今の主戦力はミツキの銃攻撃となっていた。幸い多めに弾薬を確保していた為、まだ弾には余裕がある。が、これが尽きてしまえばいよいよ素手での攻撃も考えなくてはならなくなる。ミツキは今回に限っては、それだけは避けたい心境であった。
なので、防御率が低下してくれるのは大変有難かった。これで少しは弾の節約になるかもしれない。
ミツキはスキルポイント500を使って急所射撃を習得する。欲を言えば複数攻撃スキルを習得したいところだが、今の段階では単体攻撃のスキルしか習得出来ていない。
(数をこなさなきゃダメってことか)
レベル上げ自体はそれほど苦ではないのだが、いかんせん場所が悪すぎた。ここのモンスターに限って言えば、目先の経験値よりも敵前逃亡が望ましい。だって普通に気持ち悪いんだもん。
(とはいえ、目新しい薬草は結構入手出来てるんだよねぇ)
この湖のダンジョンでは、今まで入手出来ずにいた回復系の薬草が、かなり群生しているようなのだ。
(状態異常系を回復する薬草が多いみたい)
そういえば、カーティスのギルドでもこの手の薬草採取の依頼が多かった気がする、とミツキは思い当たる。
それは逆を返せば、状態異常に陥るタイプの攻撃に特化しているモンスターが多く出没する、ということにもなるのだが、その時のミツキにはそこまでの経験と知識がさっぱり欠けていた。
その為、ミツキは不用意にモンスターからの攻撃を受けすぎていたのだ。
ミツキは失念していた。確かにHPは自動回復するかもしれない。が、そのスキルだけでは状態異常までは回復してくれないのだということを。