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異世界行ったら健康体  作者: 宮村
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 サラヘナ湖まではきっちり5日で着いた。


(やっぱり地図があるって大事だなぁ)


 地図の通りに進んで行けば、必ず辿り着けるのだ。大体の方角、というアバウトな感覚でカーティスを目指していた時とはわけが違う。今後は闇雲に目的地を目指すのはやめようと心に誓ったミツキであった。




「うわー…、なんかすっごくグロテスク…!」


 湖に着いて早々、ミツキは目の前の光景に悲鳴にも似た感想を叫ぶ。


 湖畔ということもあってか、今まで遭遇したモンスターたちとはやはり毛並みが違う。なんというか、全体的に半透明で、どろっとした個体が多い。


(うう、なんか生理的に無理なフォルム…!)


 ミツキはナメクジとか、貝類がとにかく苦手であった。こんなことなら少し遠くてもユグナ山の方にしておくんだったと、ダンジョンの入り口でミツキは立ち尽くす。


 足元ではヴェルナーが入らないの?とでも言いたげな風情でミツキを見上げている。うう、わかってるよー、でも足が動かないんだよー…と情けない顔でヴェルナーを見下ろしつつ、ミツキは背負っておいた弓矢を取り出す。


「射程としては、銃よりこっちの方があるんだよね…」


 こうなったら遠距離攻撃に徹してやる。ミツキはそう心に決めて、弓矢を構えた。






「ウサギの人形……これかな?」


 湖に入って数十分後、茂みの中にピンク色の物体を見つけた。


 随分汚れているけれど、かろうじてふたつの長い耳が確認出来る。これは元々汚れていたのか、それとも落とした後にここまで薄汚れてしまったのか、判別がつきにくいところである。


 それでも手に取ると、そこで依頼完了の報せがバングルを通して伝えられた。


「後はこれをギルドに持っていけばいいわけね」


 依頼の期限は確か一月先である。ということは、少なくともあと数週間の猶予はあるはずだ。


(……あるはずなんだけど、正直もう帰りたくなってきた)


 ここまで来るのに遭遇した数々のモンスターを思い出し、ミツキはげんなりする。どれもこれもブヨブヨでドロドロでテカテカしていて、正直直視に耐えないフォルムのものばかりだった。


「ここのモンスターとは、相性が悪すぎる…」


 それは見た目に限ったことだけではなかった。どうやらこの一帯に出るモンスターたちには、物理攻撃があまり有効ではないらしいのだ。


(ヴェルナーの攻撃、殆どノーダメージだったもんね)


 ここのモンスターには魔法攻撃が有効なのだろう。まぁそういうこともあるだろうとは思っていたが、こんな早々に出くわすとは思っていなかった。


 とはいえ、物理攻撃が全く効かないというわけでもない。現にミツキの攻撃はそれなりに効いていたからである。


(今のとこなんとかなってるけど、この様子じゃ奥までは行けないかもなぁ…)


 入り口付近でこの感触では、奥ではもっと物理攻撃の効きが薄くなっていくのだろう。そうなった時、自分は攻撃を受けても自動回復スキルがあるからいいが、ヴェルナーを危険にさらしてしまうことになる。


(それに、攻撃が効かないんじゃ経験値ももらえないしねぇ)


 倒せないのだから、アイテムもコインも入手出来ないことになる。それではなんのうまみもない。




「とはいえ、折角来たんだしなぁ…」


 このまま落とし物を回収しただけで帰還するのもなんだか癪である。ミツキはしばし考え込んだ結果、出来るだけモンスターとの戦闘は避け、このダンジョンでしか手に入らない薬草や食材の採取に目的をシフトすることにした。



 その選択が命取りになろうとは、この時のミツキは欠片ほども想像していなかった。



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