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(ん?これは…)
流れで未習得スキル一覧の方まで目を通していると、そこに今までにはなかったスキルが浮かび上がっているのを見つけた。
「銃スキル…」
これは、とミツキは思う。もしかして銃を入手したことによって派生したスキルなのだろうか。
ま、当然これは取るでしょう、と必要スキルポイントを確認する。100…ということは、そこそこ相性の良いスキルなのかもしれない。
「おっと、」
銃スキルを習得すると、今度はその下にずらずらと余白が出来た。恐らくは今の段階では習得出来ない銃属性関連のスキルなのだろう。その中に、現時点で習得出来そうなスキルがひとつだけあった。
「精密射撃、かぁ」
鑑定してみると、敵単体に強力な銃属性攻撃、と出た。まんまなのは、もはや慣れっこである。
これには必要スキルポイント300と出た。これも習得してみる。ちなみに銃撃にはHPもMPも必要なく、ただただ弾が減っていくだけらしい。いいんだか悪いんだか…
(扱い難いっていうのには、お金がかかるっていう点も含まれてるのかも)
弾を補充するにもコインが必要となる。となると、そこそこコインに余裕のある上級者向きの武器、ということになるのかもしれない。
(でもまぁ、弾を惜しんでいたら練習も出来ないし)
そこはそれ、割り切っていこう、とミツキは思う。今のところコインには不自由していないのだ。後々奴隷売買の為に莫大なコインが必要となるのかもしれないが、その時はその時である。今から気にしていても仕方がない。
「よーし、じゃ、早速練習だ!」
お腹も膨れたことだし、とミツキは勢いよく立ち上がる。この街の周辺にはいったいどんなモンスターが出るのだろう。
「鳥とか……魔鳥っていうのかな?それ系がいてくれると、練習のし甲斐がありそうなんだけど」
伸びをしつつ、そんなことを口にしていると、早速紫色をした子猫くらいの大きさの鳥が頭上を飛んでいくのが見えた。
「ま、待ってー!」
鑑定してみると、レベル7の怪鳥のようだった。こちらのレベルが高いせいかまったく寄ってきてもくれない。
レベルに開きがあり過ぎるのも困ったものである。ミツキは紫色の鳥を追いかけて、しばらく街の周辺を走り回るハメに陥った。
「おや、姿が見えないと思っていたら……街の外へ出ていたのですか?」
「ええ、まぁ…」
紫色の怪鳥を手当たり次第蜂の巣にした結果、ミツキの精密射撃スキルはレベル3にまで上昇していた。
が、その代償として通常弾の半数を消費、ついでに物凄く汗臭い仕上がりとなってしまった。
(出来れば人に会いたくなかったー…)
全身汗びっしょりの状態である。宿屋には個室にシャワーがついていた為、水魔法を使わず部屋で浴びようと横着した結果がこれだ。
汗ひとつかきません、的な涼し気な佇まいのシグリットを前に、ミツキは己の有様に猛烈な羞恥心を掻き立てられる。あぁ、こんなことならMPを惜しまず汗を流してくるんだった…。
そんなミツキの心中を知ってか知らずか、シグリットはそのまま会話を続けようとする。
この後用事はありますかって、ちょっとは空気を読んで欲しい。シャワー浴びるに決まってるでしょ、とミツキはジト目でシグリットの誘いを断る。
「ではその後で構いませんから」
だがシグリットも引く気はない様子。もう一度何か理由をつけて断ろうとしたところで、止めの一言を頂いてしまった。
「着替えは用意させておきますので、それを着て降りて来て下さい」
我が主がお話したいことがあるそうです、と、シグリットは反論を許さない、といった体の笑顔でにっこりと笑う。
この人、端から私の意見聞く気ねー…、とミツキが遠い目をしたところで、シグリットは踵を返す。あの、まだ返事もしてないんですけどね?という思いを抱えたままその後姿を見送って、ミツキは深いため息を吐く。
(……まぁいいや、とりあえずシャワー浴びてこよ)
色々と考えるのが面倒になったミツキであった。




