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武器屋の店番のお兄さんは、いかにも留守を預かってます、といった風情のやる気の無さで、正直ミツキは帰りたくなった。
(……でもなぁ、折角来たんだし、せめて品揃えだけでもチェックしていくか)
お兄さんの方もミツキの身なりで新人冒険者であると判断したのだろう、やる気の無さを前面に押し出した接客をしてくれた。おかげでこちらも遠慮なく振舞うことが出来そうである。
「銃とか弓矢があれば見せて欲しいんですが」
開口一番そう言うと、店番のお兄さんは「銃?」と怪訝そうな表情をして見せる。
「いいけど……弓矢はともかく銃は高いよ?」
しかも扱い難いし、とお兄さんは付け足す。暗に初心者には不向きと言わんばかりの態度である。
「構いません」
笑顔でお兄さんの反論を押し込め、ミツキは無言で次の行動を促す。すると面倒そうに、ではあるが、一応店の奥から幾つかの銃をお兄さんは出してきてくれた。
「今ウチの店にあるのはこの3つだけだ。何しろ銃は高いからな、あんまり売れねぇんだよ」
ミツキは咄嗟に鑑定スキルをオートにする。端からこの店員の接客には期待していない。
(左からグロック17、ワルサーP38、それにG3A3ライフルか…)
威力で言えばライフルがダントツである。ただこれを常に携帯するには少々無理がある気がする。
(触らなくてもわかる、絶対重い…)
それになんていうか、やはり初心者向きではない気がする。銃を物理攻撃の要にするにせよ、やはりある程度の練習は必須になるだろう。
となると、やはり最初は軽いのがいい。
「持ってみてもいいですか?」
「まぁ、構わねぇけど」
どうせ買わないんだろ?という態度が透けて見える。が、今はそんな接客態度に腹を立てるつもりもない。
(うーん、こっちの方が軽いかなぁ)
それに、値段的にもこちらの方が僅かに安い、とミツキはグロック17の方を手にして鑑定を行う。どのみちカーティスには行くつもりなのだし、ここで高性能な銃を無理して購入する必要もないだろう。
(なら、ここはより軽くて持ちやすい、尚且つ安い方の銃を買う方が得策かな)
それに安いとは言っても、それなりにはするのだ。まぁ今のミツキのお財布事情からすると、決して出せない金額ではないわけだが。
グロック17を手にしたまま、「これ下さい」と言うと店員のお兄さんは目を丸くした。
「マジで言ってんの?」
「お金はあるのでご心配なく」
「…………なら、いいけどさ」
ついでに通常弾と石化弾を×9セットほど購入し、弓矢は見送ることにした。
(……本当は、他の武器ももうちょっと見たかったんだけど)
この店でこれ以上コインを使うのはなんとなく憚られた。見るからに新人の冒険者が、そう高い買い物を幾つもするのは怪しさ満点である。
(あんまり、人の記憶に残りたくないんだよねぇ)
特に今の段階では、とミツキは思う。顔を売りたいのは確かだが、それはある程度土台が出来てからの話である。
(防具屋の方は、必要最低限の装備が揃えられればいいや)
その言葉通り、ミツキは隣の防具屋では最低限の装備しか購入しなかった。支給されたブーツはそのままに、追加で購入したのはレザーアーマーのみ、アクセサリも購入しなかった。
(支給されたアクセサリはランダムみたいだけど、まぁ個人的には当たりだったし)
鑑定してみた結果、支給されたアクセサリはMP+10の効果があるイヤリングだった。MPの低いミツキにとっては、願ったり叶ったりの代物である。