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早速翌日から幻視スキルの鍛錬の前に、水魔法の練習をしてみることにした。
(イメージ…手から水が湧き出るようなイメージ…?)
正直魔法なんて言われても、ハリー・●ッターレベルのことしかわからない。
呪文を唱えればいいのか、それとも小難しい理屈が必要なのか、素質とか素養とかが関係してくるのか、そもそもまともに使えるのか、という疑問で頭の中はいっぱいである。
(掛け声とかがあるとわかりやすいんだけど…)
いや、それはそれで恥ずかしいか。
ミツキは自身の感想を自分で却下し、うーむと思案する。
仮に長ったらしい詠唱が必要だったとしても、今のミツキにわかるはずもない。が、ヴェルナーが魔法を使えているのだから、詠唱以外の方法でだって魔法は使えるはずである。
(ちょっと無茶な論法だけど)
無理やり己をそう鼓舞し、ミツキはひたすらイメージトレーニングを続けた。
その方法で意味あるのか?とお思いだろうが実は前例があったりする。
毎日朝と夜の数時間、幻視スキルを発動させた状態でイメトレを続けた結果、なんと幻視スキルのレベルがこの短期間で飛躍的に伸びたのだ。
(イメトレも馬鹿にしたもんじゃない…!)
と、ミツキは歓喜したものだった。とはいえ、肝心の結果はあまりついてきてはいないのだけれど。
たまにぐにゃっと視界がブレることはあるのだが、完全に数値やスキル偽装が出来るまでには至っていない。
ただ幻視スキルの場合、発動させた状態のままイメージトレーニングを続けていても、鑑定スキル同様MPが消費されないのはかなり有難かった。
(単に成功してないから、消費されないだけかもしれないけど)
それでもスキルレベルは上がっているのだから、気持ち的には得した気分である。
ちなみにMPが消費されないと言えばアイテム生成スキルもである。
とはいえ鑑定した結果、MPが消費されないのはレベルがMAXに到達しているからであって、通常はスキルを使う度に相応のMPが消費されていく仕組みらしい。
(ていうことは、もしレベルがMAXじゃなかった場合、MPが足りてないとアイテム生成は出来なかったってわけね…)
当然レア度の高いアイテムを使用したり生成しようとすれば、相応のMPを持っていかれるのだろう。ミツキの今のMPを鑑みれば、復活の花冠なんて希少アイテムは到底作れるはずもない代物、ということになる。
(なんか色々矛盾してるよね、私のステータスって)
他の人も皆、こんな感じなんだろうか?
この疑問ばかりは今のところどうあがいても解消されない。街へ着いてから、気づかれない程度に鑑定を使って調べてみるしかないだろう。
話がちょっと横滑りしてしまったが、イメージトレーニングを続けることで得られる物があるということを、ミツキは既に学習していた。
その為、水魔法でもそれを応用しようと思ったのである。
(水……水……最初はほんのちょっとでいいんだ…)
両手をお椀の形にした状態のまま、そこに水が溢れてくる様をイメージしてみる。
(水……できれば飲めるような、綺麗な水……)
続けるうちに、段々と要求が欲深くなっていくのを華麗にスルーしながら、ミツキは一見不毛とも思えるその行為を日々繰り返した。
ミツキが顔を洗える程度の量の水を自在に操れるようになったのは、それから半月ほど経った後のことだった。