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異世界行ったら健康体  作者: 宮村
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20

 翌朝、早速ミツキは木の枝と手ごろな石ころを蔓でぐるぐる巻きにした武器を作った。


 するとなんとアイテム化されたではないか。その名も投げ斧。斧…?と思わないでもなかったが、アイテム化できるなら収納が可能である。とりあえず10セット作って1本は手に持ち、残りはしまっておくことにした。ちなみにどんな理屈かはわからない。


(あんまり深く考えちゃいけない…、四次元ポケットみたいなものだと思おう)



 一仕事終えたところで今度はお腹がすいてきた。ちらりとステータスを確認してみたところ、特にHPは減っていない。食欲とHPにはなんら関係がないようだった。


(いや待てよ、自動回復してるってことも…)


 あるかも、と思いヴェルナーの方もチェックしてみたが、やはり減っている様子はない。食欲とHPに関連性はないと判断することにした。


 昨日の残りを取り出し、果物をふたつばかり口にする。量としては少ないが、不思議と飢餓感は消えていた。


 一応鑑定してみたところ、甘くて美味しい果実、とだけ出てきた。うん、そんなの知ってるよ…という気持ちになりつつ、もう面倒なので鑑定スキルをオートに切り替えることにした。


「これで、鑑定スキルのレベルが少しでも上がればいいんだけど」


 使用回数で上がるんじゃないとしたらお手上げである。だがとりあえず、常時鑑定スキルを発動させておくことでレベルが上がればもうけものだ。



「おお、……おおお?」


 するとどうだろう、意外にもそこかしこにモンスターがいるではないか。


 よく見ないと気づかない、植物に擬態しているようなのもいれば、その辺を飛んでいる蝶や虫にいたるまで、名前がちゃんとついたモンスターであることが判明した。


「攻撃されないから、ちっとも気づかなかったよ…」


 鑑定スキルを発動させた状態のまま隣を歩くヴェルナーを見る。するとヴェルナーのレベルと種族の名前がちゃんと出てくるではないか。


(こうしてみると、桁外れに強いよね…)


 しょっぱなヴェルナーに襲われ、それを撃退したせいで他のモンスターたちが寄ってこないのだろうか。


 確かにその辺にふよふよしているモンスターたちのレベルは低い。1か2、程度である。


 それに比べてヴェルナーは7、ミツキにいたってはレベル10になっていた。


「やっぱり、自分より強い相手には襲ってこないものなのかな…」


 こうなってくると、わざわざこっちからちょっかいをかける気にもならない。


 ミツキはおとなしいモンスターたちを避け、少しばかり森の奥に探索に入ることにした。



「うえー、なんか気持ち悪い虫がいっぱい…」


 ぞわぞわしながら先へと進む。途中食べられそうな果物を発見したり、薬草を採取しながら、どれくらい歩いただろう。気が付けば山肌の露出している場所が見えてきた。見上げれば、上の方に植物の根が微かに見える。なんとなく違和感を覚えてじっと観察していると、人が通った後のようなものがうっすらと確認出来た。


「この向こうに人、いるのかな…」


 会ってみたい、と思う気持ちと、まだ早いのでは、と思う気持ちがミツキの中でせめぎ合う。


 まぁその前に、この垂直に切り立った崖をどうやって登るのか、という問題があるのだけれど。


(こういうのって、ロープとか鎖とかをかけて登るんだよね…?)


 勿論ミツキの所持品にそんなものはない。が、微かに足場のようなものが残っている。


 この通りに足をかければ、上まで辿り着けるだろうか。


(……いやいやいや、この靴じゃ無理でしょ)


 ミツキが今履いているのは、底がつるっつるの木靴である。


 足を滑らせて落下するのがオチだろう。



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